転移体質な少女は異世界で結婚したい

シラシラ

第1話 呪われた体質

 大事な話があると言われた私は夜中に宮殿内にある庭園を訪れていた。彼の雰囲気からなんとなく悟っていたけど。


 私はついに結ばれるんだわ。

 大好きなこの人と……。


 王子である彼はいつか王となり、この国を守っていく偉大な人。国民からの信頼も絶大で、なにより王子様なのに性格がとてもいいの。この国の人間でない私を優しく宮殿に迎えてくれてともに過ごしてきた。いつしかお互いを意識するなんて自然の流れよね。


 そんな素敵な人が私を呼び出したの。

 もうアレしかないじゃないの。


 唐紅からくれない色の情熱的な赤い髪はセミロングな長さ。落ち着きのある自然な振る舞いに心を奪われ、エメラルドグリーンの澄んだ瞳で見つめられると、息を吸うことも忘れてしまう。



 何処にいても絵になるアナタをずっと見つめていたいのに、恥ずかしさで耐えきれなくなり、つい目を逸らしてしまう意気地がない私。



 嫌いなんかじゃないの。大好きなのよ。

 勇気が出ない自分に苛立ち、思わずキュッと拳を握りしめた。



 彼は私に近づいて貝のように固く閉ざされた手を優しく包み込むように握ってくれた。たったそれだけの事でも私の幸せメーターは振り切れそうになる。彼に応えるように勇気を振り絞り、私も彼を見つめ返す。



「マイさん……俺と結婚して欲しい。君と過ごした時間をこれからもずっと続けていきたいんだ。だから、ずっと傍にいてくれないか?」



 キターーーーーーーーッ!



 思わず鼻息荒くなるところをなんとか冷静に保った。



 ふぅ――っ。あぶない、あぶない。

 マイ、ここは我慢よ。

 こんな素敵な出来事は一生の思い出になるの。


 しっかりしなさいよ、マイ!



 自分を奮い立たせて、リュート様に返事をすると決めた。



「リュート様、私もあなたと……えっ? ウソ? やめて! 私はここに居たいのよ、やめてぇ――っ!」



 声に出して拒絶しても願いは叶わず、私の体は青白い光の粒子に包まれると、瞬く間にその場から姿を消してしまった。



 大好きな彼をその場に残したままで。

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