第20話  輝きを武器に、自分のために



[翌日、第3部隊進軍基地にて]



「はぁ…2つの部隊だけで制圧できると思ったのに…。」



第3部隊の隊長が言葉をこぼした。



「所詮は雑魚だったってわけか…。」



まるで自分より格下のものを見ているかのように言葉を放った。



「仕方ない、この第3部隊隊長が雑魚どもの尻拭いをしますか…。」



しぶしぶといった調子で、おもむろに立ち上がると、彼は外で待っている兵隊たちのちのところへ歩いて行った。



[光の洞窟にて]



第3部隊は洞窟の中を進んでいた。


彼らの作戦としては洞窟の中を通り、まさか洞窟を通ってくるとは考え得ないであろうオルムたちを徹底的に叩き潰すことであった。




奴らは所詮オルム、我々人間の敵など存在しないだろう。


人間たちは高を括っていた。自分たちが負けるはずないと。



しかしそれは全くのところ間違いでしかなかった。


高を括っているものほど落としやすいものはないということを、彼ら人間は知らなかったのだ。




さっさと潰して家に帰りたい。




何も知らない人間たちは、自分たちが罠にかかっていることも知らずに呑気なことを考えていた。



その時



「ん?さっきより明るいような…。」



獲物は罠にかかった。


光はどんどん輝きを増していった。



「まぶ…しい!なんなんだこれは!ジーナ!貴様の言っていた情報と違う!この役立たずめ!」



隊長はジーナと呼ばれた少女のことを罵倒した後、さらに怒りを含んだ声で怒鳴った。



「貴様ら!どんなことがあっても俺の命令が出されるまでは止まるな!」




そんな無茶な…、誰かのすすり泣くような声が聞こえた気がした。




進めと言われて進めるほど周りが見えるわけでもなく、ましてやそんな勇気が彼らにあるわけでもない。


もともと第3部隊は無理やり連れてこられた優秀な元魔法戦士学科の生徒だった。



体調が行き場のない怒りをぶつけようとしている中、光はさらに輝きを増していった。



そもそもこの仕掛けは、光の洞窟は光が反射される性質を持つ岩が洞窟一面にあるので、そこにオスカー博士からもらった防衛設備を置いて、第3部隊が途中まで入ってきたら遠隔操作ボタンを押すだけ。



なんとも簡単な仕組みだが、彼らが引くまで設備は作動し続けるので後になれば後になるほど光は強くなる。




「クッ!どうにかしろ!このグズども!」



隊長はそう言ったが、元学生の兵士たちは自らが選んだわけではない道に不満しか抱いていなかったため、次々と光の洞窟から逃げていた。



それはジーナと呼ばれた少女も同じだった。


もともと彼女はパソコンなどを使い、相手の情報をつかむことを得意としていたから軍に来た。



いや、連れてこられたのだ。



隊長に罵倒されるのが心底嫌いだったジーナは、第3部隊の兵士たちに逃げようと提案をし、隊長一人残し、その他の兵士たちは全員逃げていたのだ。



「あいつら!仕方ない!逃げよう!」



尻尾を巻いて逃げていった隊長だった。



彼はその後、第3部隊の構成員、ジーナに告発され、部隊から外されたそう。


もともと金持ちの坊ちゃんだった彼は多額の納金で隊長になっていたので、部隊から失脚させるのは簡単だったとジーナは兵士たちにいった。



ジーナが告発した理由は、自分のためであった。



自分が罵倒されなければいけない理由など一つもないジーナは密かに告発することを決意していた。


暴言を録音し、それを証拠に告発したそう。




このことから人間軍に疑問を持つ兵士たちは増えていった。






[第3部隊隊長が失脚した次の日]




「はぁ!」




溜まった鬱憤を晴らすかのようにため息を吐いた。



彼はオルムの世界を侵略するために派遣された最終部隊隊長にして軍の将軍である。




「全く!自分より下ばかり見てる者共め、おかげでここまでピンチになるとは…。」




『やれやれ。』そう言葉を吐き捨てた後、彼は言った。




「たかだか魔科学、魔法でこそ勝てなくとも科学では我々の圧勝だろうに!」




彼はオルムのことを随分下に見ているみたいだ。



実際は科学力は人間の方が上ではあるが、彼らオルムは魔法でその分を補っていた。



故に、実力としてはほぼほぼ同じなのだ。




「なぜ魔科学だとわからない!寒かろうが進め!目が潰れても歩け!ボロボロになっても進軍を止めるな!」




無茶なことを言っている彼。



実際、その立場になったら雛鳥のように震えているのだろう。



言う分には簡単だ。しかし、実行するにはたくさんの勇気や知恵がいる。




彼らは進軍することだけに集中した結果。



どこかで『知能』を落としてしまったのだろうか…




まるで獣のように本能だけで進む彼らには、地形の性質を利用した策略は効果覿面だったらしい。




「はっ。どうせ怯えて腰を抜かしてきたのだろう。後始末は自分たちでやるんだな。」




軍服のマントを羽織り、彼は外に出た。




ーーー




軍服をきて、マントを羽織った彼がきた場所は



最終部隊の集まっている場所だった。




「聞け!」




彼は大声で部隊の者たちに話しかけた。




「我々最終部隊が目指すはこの国の支配だ!」




彼は続けてこう言った。




「どんなことがあってもこれから先の進軍で止まるな!」




そして最終部隊は敵陣へと向かっていった。




ーーー




彼らの部隊が進むは、第3部隊たちの進んだ洞窟ではないもう一つの洞窟だった。




「進め!」




まるで暴君かのように彼は命令していた。




しかし…




「!?」




洞窟の中は急に暗くなり、洞窟の中は不気味な雰囲気が漂い始めた。




「うわぁぁ!」




兵士たちが騒ぎ出した。



『きっとバチが当たったんだ!』『神様の怒りだ!俺らを地獄に案内しようとしているんだ!』




もともと薄暗く、寒さが目立つ空間だったため、彼らは非現実的なことを言い始めた。




「止まるな!怯えるな!たかだが魔科学だ!神など存在しないに決まっているだろう!」




彼がそういっても、元から臆病な兵士たちは戦争というだけでも、少なからず恐怖があったのだろう。



いとも簡単に正気を保てなくなっていた。




「行け!」




将軍の彼は止まらず進んでいたが…




<グサ!>




「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」




彼の腹部に矢が刺さった。




彼に矢が刺さったのを合図とするかのように、周りに矢が飛び交い始めた。




それは王自らが提案した案であった。




王側近のハッカーによって、侵略軍は4つの部隊だけだと知った王は、この洞窟の死角に弓の部隊を配置していた。




暗くなって周りが騒がしくなった後、部隊長が弓を放ったら次々と矢を放つよう言われていた。




『ウグゥ!』『がはっ!』




周りの兵士たちも次々と倒れていくが…




「かはっ!」




彼…将軍は止まらずに進み始めた。




そんなことをして無事なはずがなく、彼の体には次々と矢が刺さっていく。


数分と経たずに部隊は壊滅寸前になった。




「ぁぁぁ。」




彼がずっと進むのをやめなかった訳…




彼は負けるのが怖かったのだろう。


もともと権力を多く持つ家に生まれた彼は、周りの者たちに負けたことがなかった。



なぜなら、彼の周りの者たちは権力に逆らうのが怖かったからだ。


実力は自分が上でも、わざとミスをしたり、負けたりしていたのだ。




負けたことの無かった彼は負けを知らなかった。


自分より上の者が現れるのが怖い。




そんな彼の弱さがこの結末を招いたのだろう。


知っていたらこんなことにならなかった。






失敗や負け、弱さを知らぬ男の末路だった…。

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