第87話 調教の工夫

昨日はリン王女殿下のお忍びのおかげでとんだ騒ぎになり今朝は少しぐったりしながら王城に向かう



第三厩舎に着くと皆がテキパキと作業を行うのでセバスチャンが手を出すまでも無かった。仕方ないのでセバスチャンは厩舎の通路に出した汚れた寝藁を集めて堆肥場の集積所に運ぶ。それを見たロワイヤルから「セバスチャン様は自分の仕事をして下さい。一般作業は他の者でも出来るのですから」と注意されてしまう。確かに

スタッフの仕事を取ってしまうと後が困るのだからと思い第三厩舎の引継ぎが終わると巡回に回る。第一、第二厩舎共に特に問題も無いので研修を行っているスタッフと厩舎長に調教のアイデアを書類にして提出するように伝える。期日は十日後に第三厩舎の執務室に持参するように伝えアーサー近衛騎士団長の所に向う



近衛騎士団の執務室に入るとアーサーから「セバスチャン、宰相様から馬のセリ市を行う期日が決まったので連絡があったぞ」


「良かったです。因みに何時行われるのですか」



「今日から二十日後に競馬場で行われるそうだ。其の事で話しがあるから後で宰相様の執務室に来るようにと言われているからな」



「了解ですアーサー殿。早速、行ってきます」



報告を終えると直ぐにバルト宰相の執務室に向かう。近衛兵に案内され宰相の執務室に到着するといきなりバルト宰相から「もう私は嫌だ!」と大声を挙げられるので落ち着くように伝え話を聞く



バルト宰相からは王妃様から早く競馬を開催したいとの要望を毎日聞かされるので嫌気がきておりセリ関係全てをセバスチャンに振りたいとの事と伺う



それに対してセバスチャンは「そんなことになる前に私に話を通して頂ければ良かったのに」と話を返すとバルトから「何しろ大金が絡んでいるから直ぐにお前に話を振れなかったのだよセバスチャン」



「分かりました。後はお任せください。案内が貴族の方々に行っているのであれば問題ないです。明日には要項を書面にしてお伝えします。それと今回、イルメス馬具商会で購入した馬とは別に国の競走馬を貴族向けに十頭販売します。所有を貴族の方々に変更して維持費を支払って頂きます。そうする事で国費の負担が減ります。

競走馬が増えると競馬のレースも増やせますので。後、高年齢の馬をイルメス馬具商会に買い取りをお願いしている件も馬の選別が出来ましたのでこちらも明日、書面で報告します」



バルトは納得して「後は任せた」と満足気にして次の書類に目を通し始めたのでセバスチャンも退室する



第三厩舎の執務室に戻ったセバスチャンは食事休憩を取った後、フューチャーシップの調教を行う。まず、一頭用の放牧場からフューチャーシップを洗い場に連れて来ると手綱を柱に取り付け鞍と手綱をセットしてからフューチャーシップに跨る。洗い場から出ると第三厩舎の放牧場周りを一周並足で進みそれが済むと早足で坂路コースに向かう。坂路コースの入口に着くと少し距離をとり坂路を駆け上がる。フューチャーシップは二日おきに坂路調教を二回行う。一回目は馬なりで進ませ二本目に手綱をしごいて駆け上がる。しかしフューチャーシップはケロッとしており様子を見ながらもう一本回数を増やしてもいいかなと考えるが建設中の周回コースが完成したら周回コースを走らせてから坂路コースを上るといいなと思いながら二本目も上り終えたので厩舎に戻る。並足で戻るが乳酸が溜まると故障の原因になるらしいとスマホで見たのでミアンに交代すると放牧場周りを一周歩かせたから洗い場で手入れを行い馬房に戻す



「私が地球の知識で調教を行っているが皆から色々なアイデアを出してくれる事を楽しみにしておくかな」



セバスチャンは独り言を言いながらバルトに提出するセリ市の書類の作成を行うのであった

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