第44話 王妃様主催競馬①

夜が明け開催日当日の朝を迎えた。晴天で雲一つない青空が広がっておりセバスチャンは緊張感に襲われていた


「今までは見る側だったが競技を行う側になるとはこの世界に来た時には考え付かなかったな。兎に角考えても無駄だから出たとこ勝負なのかな。さて食事をするかな」

セバスチャンは着換えが終わるとそのまま食堂に向かいターシャとアンナに挨拶した後、簡単に朝食を済ませ王城に向かう為、玄関ホールへ歩いていると父上と母上

が現れ「父上、母上おはようございます。私は準備がありますので先に向かいますので後でお待ちしております」


挨拶を行うと父上から「今回の成果を楽しみにしておるぞセバスチャン」一言掛けられた後、馬に乗り向かう


王城に近づくといつもより多くの警備兵が出ており挨拶をしながら裏門から入城

すると丁度のタイミングでライアンと一緒になりライアンから「セバスチャン様おはようございます。今日はセバスチャン様に負けないように一着を目指していますので全力でお願いします」

「それはお互い様だライアン。私も皆に負けない様に張り切っておるのでよろしく頼む」


お互いに挨拶を行いながら第三厩舎に向かうと他のスタッフ全員が揃っており馬を馬房に入れて皆を集める

「みんなおはよう!よいよ競馬の日だ。生まれ変わった第三厩舎の力を他の厩舎の者に見せつけて欲しい。無論、私も競馬で頑張るがな。アイゼンと新スタッフはアイゼンの指示に従い動いてくれ。そして残りの者は出走させる馬の最終確認と通常業務を同時に行って欲しい。以上になるので各自持ち場に付いてくれ」


セバスチャンの指示に従いスタッフは持ち場に移動して作業を始める。セバスチャンも馬房掃除を始めて行く。今日は以前行った昼夜放牧を行う事で対応する為、水飲み場を増やし牧草を離れた場所に置き走らせる様にする


乗り役三人は自分の乗る馬の引き運動を時間をかけて行い終了後、出走前最後の

飼い葉を与えブラッシング、蹄鉄を点検を行う。釘が抜け掛かっていたりはしていなかったがプリンセスリンの後ろ脚の蹄鉄が先端部分だけ削れていたので新しい蹄鉄に打ち換える。シュミットが最終確認を行い問題ないと報告してきたので全員に早めの休憩を取らせ昼から行われる競馬に備える


セバスチャンは報告の為にアーサー近衛騎士団の執務室に赴き最終報告を行う。

騎手、出場馬に変わり無しと伝えていると第一厩舎長のスーパァ、第二厩舎長のションも報告に現れる。各自が報告を終えて退室すると二人の厩舎長から「おいセバスチャン、いくら王妃様達に色目を使っても肝心な馬や乗り手がクソならいくら走っても駄目だから諦めろ!」「ブロックメーカーもよく分かっている。第三厩舎の勝ち目が無いから三対三対五百なんて賭ける奴が居ない事になっている。第三厩舎に賭けても金を失うだけだからな!」


散々な言われ様だがセバスチャンはあえて黙って聞く事にし二人が話し尽くした所で

一礼して厩舎へ戻る

「私自身は賭ける事が出来ないが賭けてくれた人が喜んでもらえる様に走るだけだ。それにうちの現状を知らないから言えるのだと思うけどうちの馬を見たらきっと驚くと思うな。乗り方は笑われるかも知れないけどあの乗り方が負担を掛けない事が分かれば普及するだろうしね」



厩舎に戻るとやはり賭け率の話しをしており少し不安のようだ。

「みんな喜べ!今までの結果のせいで非常に評価が低い。だから結果で見返そうではないか。私は関係上賭ける事は出来ないが皆は出来るから少額賭けて懐を温かく

してもいいと思うぞ。今回限りだからなこんな賭け率は」


セバスチャンが皆に声を掛けると皆自信を取り戻したのかブロックメーカーに賭けに

行き始めた

「何て現金な奴らだ・・・・・でもその位あっていいのかな。それにいつの間にか緊張がほぐれて無くなっている。みんなありがとう」



皆を見つつ勝って見返して見せようと思うセバスチャンである

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