第28話 不正の動き有り
午前中の作業を終えて直ぐにイルメス馬具商会に向かうと店にジェニファーが店員の
仕事を行っていた「こんにちはジェニファー嬢。エイダン殿はお手すきかな?」
「はい!商会長は執務室で業務を行っていますのでご案内致します」
「よろしくお願いします」セバスチャンはジェニファーの傍で小さな声で伝える
「帰りに少しお茶でもしましょう。時間は大丈夫?」とジェニファーに伝えると
ジェニファーは頬を赤く染め首を縦に振る
少しの沈黙の後、執務室に案内される「商会長様、セバスチャン様がお越しです」
「どうぞお入り下さい」とエイダンの声がしてジェニファーがドアを開く
ジェニファーはセバスチャンが執務室に入ると一礼してドアを閉めて下がる
「エイダン殿、急に来て済まない。時間は大丈夫かな」
「セバスチャン様大丈夫です。昼からは特に商談は入っていませんでしたので」
お互いに挨拶をした後、ソファーに座るとテーブルに粗悪品の燕麦を出し話しを始める「エイダン殿、今日来たのはこの燕麦の件で来たのだが見てもらえるかな」
燕麦を拾い見ると「これは酷い。一度濡れたり水分を含んで再度乾かしたの様に
見えます」エイダンの言葉も厳しい発言が聞こえる
そしてセバスチャンが「実はこれは前回イルメス馬具商会から納品された品物で
廃棄処分をするのを間違えて納品したと思い気をつけるように忠告に来た次第だ」
その発言を聞きエイダンは即座に否定した「うちの品質管理はセバスチャン様も
ご存じのはず。ましてや燕麦自体ルクレール領から仕入れていますので・・・・・」
少しエイダンが考え複雑そうな顔をしてセバスチャンに返答をする
「セバスチャン様、多分・・・いや間違いなく不正が行われています。それも大掛
かりに貴族が絡んでいるのは間違いないです」
エイダンは不正の話しを更に詳しく話し出す「元々ルクレール公爵家は国の食糧庫
と言われる程、農業が盛んですので領地経営は安泰でそこに今回の競馬でセバスチャン様が活躍され王家の覚えも良いので不満を持つ貴族は大なり小なり居ます。
そんな一部の貴族がうちの商会の人間に賄賂を渡したりしているのではないかと
考えます」
そう話されると確かに最近のセバスチャンの行動は傍から見ると嫌味を言って来る
者も出てくる。(スーパァの様な者みたいに)
再度エイダンから「早速新しい燕麦を納品します。そしてうちで不正を働いている者
を見つけ出しバックにいる貴族を聞き出しますので」
それを聞いたセバスチャンは「有り難い申し出心居る。しかし危ない事に手を出さないで欲しい。信頼する者が傷つくのが心配だ」
「有り難い誠にありがとうございます。でも危ない橋は幾つもの渡っていますのでご心配なく」
そのあと話しを詰めてから執務室を出る。商店に行きジェニファーに声をかける
「噴水前のカフェで待っているから」
「はい」
馬はイルメス馬具商会に預けカフェに向かい歩き出すと視線を感じる。辺りを見るが視線の相手は見当たらないので気にしながら歩く
カフェに着き飲み物を注文して飲みながら暫く待つとジェニファーが息を切らして
やってきた
「セバスチャンおまたせ。紅茶の香りいいね私も同じのを注文しよう。すみません
同じ物を一つお願いします」
お互い久しぶりに会ったので最初は他愛のない話しをしながら和んでいたがセバスチャンが決心して表情が硬くなった時、ジェニファーは何かを感じたのか思いつめた表情になり「良い話じゃないよね・・・・・聞きたくないわ」と言うと瞳が潤んでいた
「ジェニファー、今日は恋愛関係の解消を話しに来たんだ。今まで自分の気持ちに嘘を付いてジェニファーと付き合っていた。貴女の優しさに甘えて逃げていた自分を許せないし女性と付き合う資格が無かっただと今更ながら気づいたんだ。許してくれなんて言えないどんなに
ジェニファーは少し考えこんだ後、話し出す「セバスチャン、私ね貴方の
気持ちに気付いていたの。一緒に居る時は楽しかったわ。でも時折二人きり
の時なのに心此処にあらずな表情をしていたのできっと貴方も苦しんでいたんだと今なら分かる気がする。私が一番で無いのは悲しいけど真摯に気持ち
を伝えてくれたセバスチャンを嫌いにはなれないわ。分かれても今後は商会の娘とお客様の立場になるだけだからこれからセバスチャンから儲けさせて
貰うわ」
ジェニファーに気を使わせてしまった事に自分の弱さを許せない自分がいた
お互いに少し落ち着いた後、カフェを出てジェニファーを商店まで送る
「今までありがとうジェニファー。これからは商人と客の立場で頑張ろう」
二人はお互いを見つめ合った後、セバスチャンは馬に乗りこの場を去る
残されたジェニファーの瞳からは大粒の涙が溢れていた
「さよならセバスチャン・・・・・本当に愛していたわ・・・・・・」
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