第22話 王妃様は拗ねていた
王妃様の登場でセバスチャンだけでなくライアン、ミシェルも驚き急いで馬を止めて降り片膝を着く
護衛の騎士を連れた王妃様は「セバスチャン!何故其方が直接報告に来ないのか?
私は文官から進捗状況を聞くだけで全くもって退屈じゃ!毎回とは言わんから其方
自ら報告に来て現場に案内せよ!」とお怒りの様子で後ろに控える護衛の騎士に目線をやるが二人共に横に首を振るだけであった
・・・・・・・・・・・・・・
「畏まりました王妃様。但し直接報告は大きく進捗した時だけで宜しいでしょうか?」
「それでよい。では早速、現場に案内してくれますか」
少し落ち着いた所でライアン、ミシェルに続きの指示を出し王妃様と護衛の騎士を
連れ販路コースに向かう
「王妃様、ここが坂路コースになります。この坂路を馬で走り抜ける事で比較的軽い運動でも平地で同じ距離を走るよりも運動効果を上げて鍛錬になります。まだコースに木材を砕いたものであるウッドチップを敷き詰めていませんが走る事は可能で
あります。しかし馬の足元に多大な負担が掛かります」
坂路コースを見てもらいながら説明を行うと興奮した顔で「なら走らなけれは良いのだなセバスチャン」止めても無駄そうな表情と勢いなので「平地で走るよりは
スピードが出ないので危険は少ないですが必ず馬を走らせずに私の指示に従って
いただけますか?」
「「不敬な!!」」と護衛の騎士から声が飛ぶが王妃様が制し「わたくしが無理を
言っているので問題ない。では早速登ろうではないか!」
王妃様の声に従う為、作業を行っていた全員を休憩とする為に坂路コース入口前に
建設している事務所前に集合させ集合している間に王妃様に断りを入れて厩舎に
行き果実水と一口サイズのレーズンパンが入った袋を私、ライアン、ミシェルの三人
で運び二人にはそのまま給仕をお願いする。仕事の手を止めて申し訳ないと二人と現場監督に頭を下げて準備が出来たので王妃様を案内する
「下から見るとかなりの高さがありますね」との問いに「王妃様、コーススタート地点からゴール地点までの高低差は三十二メートルあります。分かりやすく話しま
すと王城の頂上位の高さがあります」
「何と!そこまで高いとはさぞかし馬は大変であろう」
「ですね。それが鍛錬に繋がりますので。さて登りましょう、コースの中心が一番
柔らかいので私の後ろから続いてください」
一通り話しを済ませコースに入る。馬を走らせず並足で少しずつ登っていく。勾配
測定器が完成していないので大まかにしか傾斜は付いていないが流石坂路コースな
だけあって馬も歩いているのに約一キロ、半分の距離まで来ると少し苦しそうに
見えたので一旦馬を止める為、後ろの王妃様に声を掛ける
「馬が少し苦しそうですので一旦止めます」
王妃様と護衛の騎士二名は声に従い馬を止める
「凄いですねセバスチャン!ただ馬を歩かせているだけですのに馬はこんなに苦しそうとはこの坂路コースの有効性が分かるようですわ」
感心されていたので
「馬も人間を乗せているので負担になります。王妃様や私の様に服のみ
でしたら軽いですが護衛の騎士の方々の様に鎧を着ていたらかなりの重さに
なるので大きな負担になるでしょう。なので競馬目的の馬なら軽い人を乗せ
騎馬目的なら鎧を装備したまま走る等の工夫が必要だと思われます」
馬の休憩を終え残りを登り切り坂路コースの頂上から見る風景はこの世界に
来てから初めて見た景色だった
「自然が豊かで素晴らしいな。こんな世界に蒸気機関なんて持ち込んで文化
レベルを上げるなんて勿体ないと思うな。自然に文化が進むのが一番だと
思うけど神様の希望だから従うけどね。やっぱり勿体ないな・・・・・」
自然の少ない日本の東京二十三区内で育った和雄にはこの雄大な景色に心を
動かされたようであった
「王妃様、如何でしたか」
「これは本当に凄いの!完成が待ちどうしいわ」
終始興奮気味の王妃様を宥めるのが護衛の騎士と三人で大変だったが好評
だったので完成後、次の工程に移れる自信が出来た
「では王妃様戻りますが帰る前に私の厩舎で見て貰いたい物があります」
その言葉に王妃様の目が輝いていた
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