122, 5-11 逃走の果てに

前回のあらすじ

 俺はおしっこではない



俺は変態ではない。

百歩譲って変態だとしても、ロリコンではない。

俺が好きなのはエッチなお姉さんだ。

だからそれを教えてやる。

「俺はエッチなお姉さんが好きだ!!」

「何を言ってるんだこの変態がっ!!」

どうやら逆効果だったらしい。

イケメンエルフは弓エルフにクラスチェンジし、矢を放ってくる。



弓。

普人の間ではあまり一般的ではない。

狩人は使うが、まぁそれだけだ。

モンスター相手に弓を使ってもあまり効果がない。

ゴブリンや小型モンスター程度なら効果あるが、オーガクラスになると意味がない。目に命中させる技量があれば別だが、弓でそれをやるのはかなり難しいだろう。

魔法を使えば別だが、当然矢は飛んでいくわけで、そうなると魔力消費し攻撃魔法とあまり変わらない。身体強化を使ってナイフを投げたほうがいい。

大型モンスターには全くダメージが通らないだろうから騎士も使わない。

衛兵も当然、街の中で犯罪者相手に弓を射るなんてことはしない。


だが、やはりエルフというか。エルフといえば弓というか。ものすごい速さで矢を放ってくる。

あの弓はたぶん魔法武器だろう。


前世は弓矢を避けるとかほぼ不可能らしい。

戦国時代の戦場での殺傷率は弓が6割とか7割とか聞いたことがある。当然詳しくは知らない。


この世界では、飛んできた矢を掴める。割と簡単に。身体強化があるのだ。

当たっても、流石に無傷とはいかないが、体を貫くようなことはない。

ただ、弓エルフが放ってくる魔法武器の矢は掴めそうにない。

当たるとヤバそうだ。



子供が近くにいるのにバンバン放ってくる。

仕方ないのでロリエルフを抱っこして逃げる。

「ま、待て!子供をどうするつもりだ!!」

完全に誤解だが、どうしろというのか。

光球の魔法を頭にくっつけて走ると、追ってくるエルフが増えた。

周りを見るとなんか畑がある。

(ここ集落じゃないか?)

畑を踏まないように気をつけながら逃げていたら、太い木の根元で囲まれる。

最初に遭遇した弓エルフが一歩前に出て、堂々たる様子で言う。

「さあ、観念して子供を離せ!!」

俺はロリエルフを差し出す。

「くっ、子供を盾にするとは卑怯な・・・」

(いや、受け取れよ・・・)

どうしたもんかと悩んでいると、ロリエルフが言った。

「あ~~~~~」

・・・おもらしだ。



「ど、どうする。お、おい・・・」

弓エルフがパニクっている。

完全にこいつのせいだが、今はロリエルフをどうにかしてやらないとな。

おもらしがショックだったのか、しょんぼりしている。

双子エルフを呼んでこようかと考えていると、頭上から声が。

「ちょっと~~~!こんな夜中に何やってるのーーー!」

上を見ると家がある。ツリーハウスというやつだろう。さすがエルフ、木の上に住んでいるらしい。

大抵のモンスターは地上にいるし、飛行型も木窓をしっかり閉めていれば家の中に侵入できない。理にかなった家だ。

そんな家から女性がシュタッと飛び降りてきた。

黒髪ロングで黄金の瞳の女性は、ロリエルフを見て固まっている。

「おかあさん、ただいま」

「か、勝手に集落を出ちゃ駄目って言ったでしょ!!」

どうやらロリエルフの母らしい女性は、短パンに半袖のシャツという寝間着姿だ。露出も多く、下着も透けて見える。

怒った顔で泣きながらロリエルフごと俺をハグする。

「よしよし」とロリエルフは母エルフの頭をなでている。

感動の再会なのか周りにいる弓エルフ達も涙ぐんでいる。

そんな中で俺は思った。

(いい匂いだな)

念のために言っておくが、おしっこの匂いではない。母エルフの匂いだ。

俺は変態ではないのだ。

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