094, 0-52 幕間・家出令嬢の依頼
・セリーナ=ハルフォードの依頼
前回のあらすじ
チャン、チャカチャカチャカチャン
私が憐れみの目を向けていると、チンピラ達が目覚め始めた。
変な男は回復魔法が使えるようで若いチンピラの治療を始める。
先程のよくわからない歌の内容が本当であればチンピラと無関係のはずだが・・・。
「大丈夫か?」
「うっ、俺は一体・・・」
「魔法は使えるか?」
「い、いえ・・・。俺はまだ新人で・・・」
「おそらく頭の怪我だろう。回復魔法を使ったがちゃんと治っているかわからない。念の為、ビブリチッタ様の教会にいる親父様に
「あ、ありがとうございます。・・・もしかしてあなたは―――」
「一体何があったんですか?」
ひどく顔色の悪いギルド職員が現れる。
「そこにいる女がいきなり暴力を振るってきたので謝罪と賠償を要求しました」
「なんだか歌が聞こえた気がしたんですが・・・?」
「賠償してもらえないのなら衛兵を呼ぶしかありません」
「冒険者同士の喧嘩で衛兵を呼ぶのは大げさですよ」
変な男はそれを不満に思ったのか私に問いかけてくる。
「お前は冒険者なのか?」
「冒険者登録をしに来たのだ」
「つまりまだ冒険者ではないと・・・。ギルマス、衛兵を呼びましょう」
「奇人君、あなたが怒っているのはわかりました。ではこうしましょう。新人教育の名目で彼女が依頼を出し、あなたがそれを受ける。衛兵を呼ぶと、仕事が増えてしまいますから・・・。君はそれでいいですか?」
正直教育係などいらないが、衛兵を呼ばれても困る。それに奇人と呼ばれている変人はチンピラと無関係のようだし、ここは金を払っておくべきだろう。
「私はそれで構わないが・・・、そっちの男はそれでいいのか?」
「・・・ギルマスに感謝するんだな」
ずいぶんと不満げだが金貨を5枚を差し出すとすぐさま受け取る。
(卑しい奴め)
だが受け取った金貨を若いチンピラに渡す奇人。
「これを治療費の足しにするといい」
「い、いいんですか?」
「新人は遠慮をするな。治療が必要なければ魔力感知をしてもらうといい」
「ありがとうございます奇人さん!!」
「奇人と呼ぶのはやめてくれ」
その行いを見ていたチンピラ達は「さすが奇人だ」「奇人を見習わんとな」と感心した様子で頷いている。
(やはりこいつは変人として有名なのか・・・)
「君は冒険者登録の為、書類に必要事項を記入して下さい」
職員の指示に従い、冒険者証を受け取る。
ずいぶん早く出来るものだと感心していると、奇人が1枚の紙を持ってきた。
「この依頼票と冒険者証を受付に出してスタンプを押してもらえ。ついでに受付にある本は無料だから持ってこい」
「スタンプ?」
「行けばわかる。依頼票の控えもちゃんと受け取ってこい。受ける依頼はゴブリン退治だ」
依頼を受け街門の前まで行くと馬車賃を払う奇人。
「自分の分は出せるぞ?」
「もう払ってしまった。さっさと乗れ」
(金に困っているわけではないのか?)
変人ではあるが、悪人ではないようだ。
馬車の移動中に本を読んでおくように言われたので目を通す。
何故かゴブリンが薬草を指差し効能を解説している。
文字は少ないがわかりやすく、この本を読みさえすれば教育係など必要なさそうだ。
馬車が止まり降りると森に行くと言う奇人。
「ダンジョンへ行くのではないのか?」
「ダンジョンの外のゴブリンを倒す依頼だ」
(ゴブリンのような弱いモンスターは冒険者が退治していたのか・・・)
奇人は、森の植生や小型モンスターなど全て記憶しているのかスラスラと説明を始める。
変人ではあるが、新人教育を任されている事といい優秀なようだ。
教育係など必要ないと思ったが、ここは素直に世話になろう。
「私の名前はセリーナという。貴方の名前はなんというのだ?」
「ジョニーだ―――」
男はぶっきら棒に名乗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます