084, 4-03 全裸の獣人女

前回のあらすじ

 セクハラ玄人だ



洞窟を歩いていると「お~い、誰か~」という女の声が聞こえた。

俺は走る。

後ろで家出令嬢がなんか言っているが、無視する。


ゴブリンは馬鹿なので、女を連れ去っても人質にするなんて滅多に無いのだが、たまにそういう事をする個体もいるらしい。

人間にも個人差があるし、ゴブリンにも多少知恵が回るやつがいるんだろう。

そもそもこの洞窟で人が囚われていたなんて聞いたこと無いが、運悪く捕まったのかもしれない。

人質にされると面倒だ、と急いで広場まで行けば、酒瓶片手に干し肉を食っている裸の女がいた。

「おっ!ゴブリンじゃない」と言う、挑発的な銀の瞳をした、ミディアムショートでボサボサの銀髪女は、手首と足首周りに毛が生えている。尻尾もあり、頭の上に獣耳がある。獣人だ。


俺は木箱から大きめの布を取り、獣人女にかけてやる。

家出令嬢が遅れてきたので、俺は「ゴブリンに囚われていた女だ。女性の方がいいだろう」と言うと、獣人女が「アナタがいいです。おぶって下さい」と割り込んでくる。

この女は確実にやばい女なので家出令嬢に面倒を押し付けようとしたのだが、家出令嬢は「お前が頼りにされているのだからお前が面倒を見るべきだ」と拒む。

全力で逃げれば逃げられるか考え、無理そうだと判断し、仕方なく背負う。


洞窟を出るまでの間、でかい胸を押し付けてくる獣人女。

雑なセクハラだ。このセクハラ素人め、と思いながら洞窟を出ると、獣人女は「少し待って下さい」と言い、洞窟の後ろに回る。

少しして出てきた獣人女は、へそ出しルックのシャツにジャケットを羽織はおり、ホットパンツを履いていた。手にはグローブを少し金属加工したような軽めのガントレットをはめている。靴も普通に履いている。

家出令嬢が「その服はどうしたんだ?」と聞くと、獣人女は「拾いました」と答える。

普通にピンピン歩いていたくせに、ヨロヨロと倒れた演技をし、俺に助けを求めてくる獣人女。

背負って森を歩けば耳に息を吹きかけてくる。


馬車の中でも体をり寄せて胸を押し付けてくる。

同乗している冒険者は目をらす。

助けてくれよ・・・。



街に着いたのでもう終わりだろう、と解散宣言すると「金を払ったのだからもう少し面倒を見るべきだ」と図々しく要求してくる家出令嬢。

金はお前が殴った賠償だろう。

そして獣人女は「私も冒険者になって人助けをします」と言い出す。

なりたきゃ勝手になればいいが完全に一緒に行動する気でいる。

仕方がないので適当な店を回り、冒険者に必要そうな道具や装備などを説明する。

そうして時間を潰し冒険者ギルドに行く。


冒険者ギルドに入ると毒舌プリーストが毒を吐いてくる。

今日はやばい女にばかり遭遇そうぐうする日なのか、と思うも、いや毒舌プリーストには毎日会うな、と考え直し、いやいや感覚が麻痺してるだろう、と正気に戻る。

毒舌プリーストは毒を吐いて立ち去った。


家出令嬢が報酬をもらい、獣人女の冒険者登録をする。取り敢えず今日は終わりだろうと宿に泊まるようにうながす。

家出令嬢はまだ面倒を見ろと言っていたが、借家の場所は知られていないしバックレよう、と考え帰ろうとすると獣人女は金が無いという。

絶対に嘘だがゴネにゴネ、家出令嬢も一緒に俺の家に泊まると言い出した。



俺の意見を完全に無視して家についてくる二人の女。

見た目はいいが、見た目だけだ。こいつらはヤバい。


俺は家でブーツを脱ぐ。土足厳禁だ。

二人の女にも靴を脱ぐように指示し、革鎧を脱いで適当に浄化の魔法をかけておく。一週間に一度、装備の点検時に綺麗に掃除する。

風呂をいれ、二人に入るように言う。

先に入りたいが、獣人女が乱入してきそうで怖い。


家出令嬢が風呂に入っている間に飯の支度をする。

獣人女は意外にも大人しく座っている。腹が減っているのだろう。

風呂から上がった家出令嬢はポニテを解いて・・・、赤白ストライプのパジャマを着ていた。色気は全くないが妙に似合っている。

囚人服だろうか。自分から刑期を務める気なのか?だが、この街に刑務所など無い。残念だ。


獣人女が風呂に入り、上がった頃に飯の支度が終わる。

獣人女は相変わらずへそ出しルックだ。



飯はチャーハンに中華スープという、なんちゃって中華料理。


前世、外国には炊きたてのご飯の匂いが苦手な人がいる、なんて聞いたことがあったが、俺はこの世界で炊きたてご飯の匂いが駄目だ。

前世の米と同じ形だし、味も同じだと思うのだが、普人の嗅覚が前世の人間と違うのか、似ているだけで全く別の品種なのか。この街の米は田んぼではなく陸に植えてるからな。

だから米料理は炒めたり煮込んだりする。醤油など無いので塩コショウのチャーハンだ。

枝豆は普通にあるので頑張れば作れるかもしれないが、醤油づくりに情熱を燃やす気にはなれない。


後はでたザリガニとサラダ、マヨネーズを出す。

卵と酢と油を混ぜ塩で味付けするだけだが、結構難しく最初は全く上手くいかなかった。

ケチャップは作り方を知らないので作れない。頑張れば作れるかもしれないが、やはりそんな情熱はない。

俺の料理知識などこの程度だ。


この程度だが獣人女は気に入ったようで、ガントレットを外してガツガツ素手で食べている。スプーンを使えよ・・・。

獣人女が飯に夢中になっている間に風呂に入る。

サッと入りすぐに上がったのだが、もう食い終わっていた。よく噛んで食べろよ・・・。

家出令嬢はなんだか上品にゆっくりと食べている。育ちがいいんだろう。

俺も飯を食い、最後にアイスを出す。

適当にミルクと砂糖を混ぜて冷やせば出来るからな。ミルクはちょっと高いが、たまに食いたくなる。

家出令嬢は初めて食べたと驚いているので普人の国にアイスはないらしい。



飯を食い終わったので、ベッドは女達に譲り、俺はソファーで眠ることにする。

善意の気持ちではなく、ベッドで寝て獣人女が乱入してきたら怖い。


ベッドに女が二人寝ているというある意味夢のような状況だが、俺はまだ童貞だ。

今日は童貞卒業する日だったはずが何故こうなったのか。

明日こそ娼館に行くぞ!という強い思いを胸に眠りについた。

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