076, 0-44 幕間・毒舌プリーストの観劇

・エミリアの観劇


前回のあらすじ

 野菜は俺のもんだぁあァァァアァァァァァ!!!!




『野菜は俺のもんだぁあァァァアァァァァァ!!!!』

叫ぶ元冒険者を元衛兵が斬る。

『はっ!この野菜はもう俺のもんだ』

倒れ伏す元冒険者を見ながら吐き捨てるように言い――キャベツを拾う。

そんな元衛兵の太腿を―――小さな子供がナイフで突き刺す。

『なっ!なにをっ!!』

ナイフを突き刺した子供が元衛兵から離れると、路地裏から次々と子供が現れ――元衛兵に石を投げる。

『やっ、やめろお前ら!俺を誰だと思っている!!』

子供達は容赦なく石を投げ続け、元衛兵が死んだのを確認すると―――石を使った殴り合いを始めた。

最後に残った子供は、頭から血を流しながらキャベツを拾い上げ――倒れる。



たった一つのキャベツを巡って殺し合いが始まるこの街は、かつてはカナリッジと呼ばれた平和な街であった―――



◇◇◇◇も◇ち◇ろ◇ん◇ジ◇ョ◇ニ◇ー◇◇◇◇



事の起こりは何時だったか――

ある新人冒険者の一言が始まりだった―――


『畑護衛って拘束時間が長いし、大して儲からないし、他の仕事が良いんですけど』


中級冒険者はその考えを正そうと言葉を掛ける。

『みんな飯は食うだろう。畑護衛は大事な仕事だ』


だが新人は受け入れず―――

『そんなの俺らの知ったこっちゃねぇっすよ。衛兵だって護衛してるし、別に俺らがやらなくてもいいでしょ』



それが大きな間違いだと知る由もなく―――



◇◇◇ジ◇ョ◇ニ◇ー◇と◇い◇ば◇こ◇れ◇◇◇



街の外の野菜畑。

二月に一人は死人が出る危険な仕事―――

だが農民は挫けることなく野菜を作る。

街の人々が野菜を食べ、笑顔であってくれればと―――



しかし世界は残酷だった―――



『あんたぁーーーーーー!!!』

一人の女が男に駆け寄る。

犬型の魔物に襲われた農民の妻であり、彼女も農民だった。

『いやぁーーー!離れろこのーーーーっ!!』

手近にあった棒きれを拾い魔物を叩くも――通用するはずもなく、夫婦は殺されてしまった―――



護衛の数が足りないのだ―――



二月に一人の死人は一月一人になり―――

その間隔は徐々に短く――死にたくないと農民を辞める者達が――畑は遂に誰もいなくなってしまった―――


それだけではない―――

彼らは思い出してしまった―――

街の外がどれだけ危険なのかと―――


その恐怖は行商人にも伝わり、街の外へ出るものはいなくなる。



野菜を巡る戦いの幕開けだった―――



◇◇◇ジ◇ョ◇ニ◇ー◇に◇よ◇ろ◇し◇く◇◇◇



街の人々が家庭菜園で作る僅かな野菜――

それを巡る争いは激化の一途をたどる―――



『スイカは果物だ!持っていかないでくれぇ~~~』

『スイカは野菜だぁぁあーーーーーーーーっ!!!』



『トウモロコシも野菜だろ』

『えっ?!穀物じゃね?』



何が野菜で何が違うのか、その見分けは難しく――

野菜を巡る争いは――食料を巡る争いへと形を変えていく―――



どうしてこうなってしまったのか―――



あのとき新人冒険者が護衛の依頼を受けていれば―――



カナリッジは滅んだ――――――





ジョニーは、右に左に機敏な動きで立ち回り話を終えると、新人冒険者を無視して畑護衛の依頼票を取る。

それを受付カウンターに叩きつけ、大きな声で言った。

「スタンプ押してくれ!!!」

「わかったし!!!」

女性受付のプルネラさんが張り切った様子でスタンプを押す。

依頼票の控えを受け取ったジョニーは冒険者ギルドを出ていってしまった・・・。


残された新人冒険者達が言う。

「お、俺達も行こう!」

「そうだな!」

「俺達でこの街を守るんだ!!」


その話を聞いていた他の冒険者達も畑護衛の依頼票を取る。

「へっ、お前らだけに任せておけるか!」

「俺は南から回ろう」

「そうだな。北の畑ばっかじゃ片寄っちまう」



私も畑護衛の依頼を受ける。

街の外では多くの冒険者達が農民を守っていた。


(凄いなジョニー・・・)


ジョニーはカナリッジを救った。

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