072, 0-40 幕間・毒舌プリーストの遭遇
・エミリアの遭遇
前回のあらすじ
胸の大っきなリリス
シスター・デビーは頼りにならないから信徒さん達に教会をお願いする。
最後のお掃除をして、祈りを捧げ、教会を後にする。
(どうか、運命の人に会えますように・・・)
冒険者ギルドには男性の受付が2人、女性の受付が1人、でも女性受付には誰も並んでいない。
きっとなにか事情があるんだと思って男性受付の列に並ぶ。
列が進み、私の順番まで後少しという時、私と同い年ぐらいに見えるブラウンの髪の男の子が女性の受付に話しかける。
(大丈夫かな・・・)
やっぱりなにか事情があったみたいで、大声でギルドマスターを呼ぶ女性。
顔色が少し悪い男性、ギルドマスターが代わりに仕事をしていた。
「次の方どうぞ~」
よそ見している間に列が進んだみたいで受付の男性が声をかけてくれた。
「あっ、えっと、その・・・、冒険者登録したいんです」
「字は書けますか?」
「はい」
「ではこの書類に名前と性別、年齢と誕生日、特技もあれば書いて下さい」
「はい」
記入が終わると受付の男性は、受付奥にある部屋に入っていき、少しして戻ってきた。
「これがFランクの冒険者証です。最低限の身分証としても使えます。銀貨が5枚で再発行出来ますが紛失には気をつけて下さい。酒場のカウンターにいる義足のお爺さんが相談に乗ってくれます。なにか質問はありますか?」
「ありません」
「それでは・・・、次の方どうぞ~」
酒場のカウンターに行くと、さっきの男の子が義足のお爺さんと親しげにお話しをしている。
「それでまぁドワーフの国まで行って義足を作ってもらったってわけよ」
「ドワーフの国ってどんな所なんですか?」
「そうだな・・・。魔法具が―――」
このままじゃ話が終わらないと思って私は声をかける。
「あの!その・・・私・・・新人なんですけど・・・受付の人が、お爺さんに相談に乗ってもらうようにって・・・、それで・・・その・・・」
「新人か?」
「はい・・・」
「そうか・・・。二人ともちょっと待ってろ」
お爺さんが立ち上がり酒場で食事をしていた2人の冒険者に話しかける。
なんだか視線を感じて隣を見ると、男の子は私の胸をじっと見ていた。
(へ、変態・・・?!)
胸を隠すと、男の子は私の顔を見て話しかけてくる。
「それは、魔法の防具か?新人なのに、どうやって手に入れたんだ?」
(そ、そっか・・・。魔法の装備が珍しかったんだ・・・)
「えっと・・・。私は孤児で・・・、孤児院の管理者、マザー・ウィニーが亡くなる間際に魔法の装備を下さったんです。プリーストの冒険者になって、多くの人を助けるようにと・・・」
「そうか。それは大事にしないとな」
「うん・・・」
「よしお前ら。こいつらが面倒見てくれるぞ」
義足のお爺さんが2人の男性を連れて戻ってきた。
大盾を持った男の人が言う。
「俺はラリー、こっちの背の高いのがサンディーだ」
「俺はジョニーといいます。よろしくおねがいします」
「わ、私はエミリアです。よろしくおねがいします」
「ウンウン、二人とも礼儀正しくていいな。じゃあ掲示板から依頼票を取ってこい。よく考えてな」
そう言いラリーさんは冒険者ギルドの壁を指さす。
ジョニーは「わかりました」と言い、掲示板の方に歩いていく。
(わ、私も行かなきゃ)
ジョニーの後に付いていく。
どの依頼がいいのか悩んでいると、ジョニーはさっと依頼票を取ってラリーさん達の元に戻っていく。
私もジョニーの後を追い戻る。
「この依頼を受けようと思います」
「うん、まぁ悪くないな。受付に行ってこい」
「はい」
受付に向かうジョニー。
テキパキと動くジョニーを見て私が落ち込んでいるとラリーさんが励ましてくれた。
「あいつみたいに最初から動ける新人は少ないよ。そんな落ち込まなくても―――」
「スタンプ押してくれ!」
「な、なんだ?」
大きな声がしたほうを見ると、ジョニーが腕を振り上げながら受付の女性に向かって言う。
「スタンプ押してくれ!」
受付の女性がなにか言うと、ジョニーはさっきより大きな声で言う。
「スタンプ押してくれ!!!」
するとギルドマスターが出てきてジョニーの手を握り、周りの冒険者たちは拍手を始めた。
(一体何が起こってるんだろう・・・)
戻ってきたジョニーは「スタンプを押してもらいました」と言い、依頼票をラリーさんに渡すと突然走り出し、入り口の前で叫ぶ。
「ゴブリンだ!ゴブリン退治だ!!」
そして出ていってしまった。
今まで一言も話さなかったサンディーさんが言う。
「何だあいつは・・・」
ラリーさんは少し困ったような声で言う。
「・・・ちょっと変わってるだけだろ」
義足のお爺さんの「置いて行かれるぞ」という言葉でジョニーの後を追う。
冒険者ギルドを出ると、ジョニーは普通に待っていた。
(なんで1人で飛び出したんだろう・・・)
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