066, 0-34 幕間・生意気男子の葛藤
・デュークの葛藤
前回のあらすじ
ジョニーすごい
街に戻るとジョニーはそのまま宿屋に帰ると言う。
「冒険者ギルドに行かないのか?」
「金に余裕がある冒険者は、週に一度ぐらいしか報酬を受け取りには行かない。そうしないと、ギルマスが大変だからな・・・」
「そ、そうなんだ・・・。なぁジョニー、冒険者ギルドってずっとあんな感じなのか?スタンプしか押せない人じゃなくて・・・もっと普通の人を雇ったほうがいいんじゃ・・・」
「その辺は俺も詳しくは知らない。だが、俺達は冒険者だ。ギルドの雇用問題に口を出す立場にはない。まともな職員もいたが、体調を崩して辞めてしまった。見舞いに行った後に変な連中に絡まれたからな。関わらないほうがいい」
「それって大丈夫なのか?」
「衛兵の管轄だ。そっちに話が伝わるようにしておいたから・・・、そのうち解決するだろう」
(そういえば、ジョニーの師匠は衛兵さんだったな・・・)
俺たちは、冒険者ギルドで報酬を受け取り、御飯を食べて、宿屋に帰る。
アデラは、店主さんと交渉をし始めた。
「あの、前払いしちゃったけど・・・、今から二人部屋に変更できますか?」
「無理だな」
「どうしてですか?」
「どうしてってお前・・・めんどくせぇからだよ」
面倒くさいって理由はどうかと思ったけど、宿に泊まる時ちゃんと説明してくれたし、俺たちが悪い。
「アデラ、お金はもったいないけど、仕方ないよ。来週から二人部屋に移ろう」
「でも、ジョニーは・・・新人は遠慮するなって」
「それは冒険者の間だけじゃないか?」
俺たちの話を聞いていた店主さんが言う。
「お前ら、奇人のジョニーの知り合いなのか?」
「えっと・・・はい。今日は、一緒に畑護衛の依頼を受けました」
「ああ、新人の指導か・・・。まぁ、あいつの知り合いならいいぞ。今日から二人部屋で。金は返してやるよ」
急に二人部屋でいいと言ってくれた店主さんにアデラが聞いた。
「ジョニーを知ってるんですか?」
「直接は知らねぇけど、俺の弟が冒険者ギルドの職員だったんだよ。あんまり忙しいとかで体調崩して辞めたんだけどよ、奇人のジョニーはわざわざ見舞ってくれてな。
そのとき弟が俺の宿の話をしたらしくて、定期的にあいつの紹介だっつ―客が来るから。まぁ、あいつの知り合いなら・・・多少の融通は聞いてやるよ。部屋代引いた残りと鍵だ。一人部屋の鍵は荷物を移した後に返せ」
「あ、ありがとうございます」
二人部屋は一人部屋より少し広くて、ベッドが2つあるだけの部屋だった。
「お風呂に入る」
「そ、そうか」
アデラがお風呂に入っている間、俺はなんだか落ち着かなくて、部屋の中をグルグルと歩き回る。
「何してるのデューク?」
「アデラ!・・・これは・・・訓練だよ!」
「歩く訓練?」
「ジョニーも言ってただろ、体がどう動くのか考えろって」
「そうだね。デュークもお風呂に入ったら?」
「う、うん」
「アデラが入ったお風呂・・・」
(これじゃあ俺・・・変態みたいだ)
俺は、できるだけアデラのことを考えないようにしてお風呂に入った。
お風呂から上がると、アデラは体を曲げる訓練をしていた。
俺は、アデラの方を見ないように訓練する。
「次は魔法の訓練をしよう」
「そうだな・・・。なぁアデラ、水を入れる器って持ってる?」
「お風呂にある
(お、お風呂・・・)
一緒の
だから俺は、魔法の訓練に集中できなくて、アデラの手ばかり意識してしまう。
そんなアデラの手のひらの上に、水が浮かんだ。
「ア、アデラ、それ・・・」
「あっ」
浮かんでいた水は
「どうやったんだ?」
「水が浮いたらいいなってイメージしただけだよ。すぐに落ちちゃった・・・」
「でも凄いよ!ちゃんと練習すれば、きっとジョニーみたいに強くなれるよ。頑張ろう!!」
「うん」
その後、アデラを意識しないように気をつけて、水を何度もすくいながら、魔力が手をまとうイメージする。
「デューク、もう寝よう」
「え?」
「もう夜も遅いよ。今日はもう寝よう」
「そうだな・・・」
気づいたらもう夜遅くて、勉強をせずに眠ることにした。
隣のベッドでアデラが眠っている。
でも俺は、なんだかすごく疲れていて、ちょっとだけドキドキしたけどすぐに眠ることが出来た。
依頼を受けて、お金を稼いで、訓練をする。
大変だけど、ずっとアデラと一緒だ。
一週間たったので、ジョニーに会いに酒場に行く。
ジョニーは魔力感知をしていた。
「ありがとうございます、奇人さん」
「感謝するなら奇人と呼ぶのを止めてくれ」
「俺もいつか二つ名持ちの冒険者になれるようにがんばります」
「そうか・・・まぁ、頑張れ」
そんなジョニーに酒を飲んでいた男が文句を言う。
「ハッ、俺らの時代は必死に金を貯めて魔法を使えるようにしたもんだぜ。それを無料でだと・・・ふざけやがって・・・」
(ジョニーは親切でやってるのに・・・)
なんだか許せなくて、文句を言ってやろうとその男に近づくと、ジョニーに止められた。
「よせ、この男には勝てない・・・」
「勝てないって・・・、別に戦う気はないよ・・・ちょっと文句を言おうと・・・」
「止めておけ。危ないから近づくな」
「危ないって・・・」
「この男には誰も勝てない・・・」
「え!?ジョニーでも勝てないのか?」
「ああ・・・」
(そ、そんなに強い人なのか・・・)
「この男は、『恥知らず』の二つ名で呼ばれている。酒が弱いくせに酒を飲み、定期的に酒場の床を汚す事から付いた二つ名だ」
「床を汚す?」
ヨロヨロと向かってきた男から俺たちは離れる。
男は転んで、ゲロを吐いた。
男は酔いが冷めたみたいで「すまん」と言って床の掃除を始めた。
(冒険者ギルドって変な人しかいないな・・・)
「お前ら飯はもう食ったのか?」
「まだ食べてない」
「なら飯を
座って注文をしようとすると、また変な人がやって来た。
「あんた、無料で魔力感知してくれるって本当か?ちょっと俺にもしてくれよ」
「それは無理ですね」
「なんでだよ」
「あれは・・・、新人冒険者の死亡率を下げるためにやっているんです。魔法が使いたいなら、教会へ行って下さい」
「へぇ~。じゃあさ、俺が今から冒険者登録すりゃあ魔力感知してくれるのか」
「いいですよ。今日はゴブリン退治に行く予定ですから、一緒に行きましょう。その後、魔力感知をしてあげますよ」
「はぁ~~~なんだよそりゃ。いいからとっとと魔力感知してくれよ」
俺は知ってる。こうやってジョニーに向かっていく奴は・・・必ず酷い目にあうって。
「お腹が空いたよシスター」
ジョニーが変な声で変なことを言い出した。
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