034, 2-10 必殺技と封印されし闇
前回のあらすじ
ズッ友だよ
今日は12歳の誕生日。昨日、エロシスターの知り合いが亡くなったとかで、埋葬のために剣術訓練は中止になった。
だから、じっくりとイメージトレーニングをした。今日はイケメン師匠に勝てる。そんな思いで立ち合いを始める。
イケメン師匠の上段からの攻撃を、俺は余裕を持って回避する。
立ち合いを始めた頃、紙一重で避けたりしないの?と聞いたことがある。
紙一重で避ける、というのは次の攻撃につなげるための避け方らしい。
二歩離れて安全に避ければ、自分が攻撃する時に二歩詰める必要がある。
半歩離れて紙一重で避ければ、たった半歩で攻撃が出来る。
単純に実力が足りずに安全マージンを取れない場合もあるが、イケメン師匠との立ち合いは、もう何度も繰り返している。
回避が基本で剣で受けたりもしない。避けたほうが安全だからだ。
剣で受ければ押し切られるかもしれないし、その後の攻撃にもつながる。
技量が上の相手だと手首の動きで剣を絡め取ってくることもある。昔イケメン師匠にやられた。
しかし、離れていればそんな事はできない。武器も痛むので鍔迫り合いなんかしないほうがいい。
どうしても回避できない時は、軌道をずらすように弾く。
遠距離攻撃を多用してくる敵や、間合いが広い長物なんかは対処が変わるが、今はショートソードの間合いだ。
とにかく余裕を持って回避する。それが図書室にあった本の剣術理論であり、イケメン師匠の教えだ。
勝つための剣術ではなく、負けないため、死なないための剣術だ。勝てない時は逃げろと載ってるしな。
だからイケメン師匠も俺も回避を優先する。これではいつまで経っても勝負がつかない。
そこで俺は、イケメン師匠の左から右への攻撃を、紙一重で回避する。驚くイケメン師匠。
だがイケメン師匠の技量なら、俺がこの間合から距離を詰めて攻撃しても、後ろに跳んで回避するだろう。
だから俺は必殺技を使う。距離を詰め、木剣を持った右腕に魔力を集中し、振り下ろす。通常の身体強化時より速く振り下ろされた斬撃は、見事にイケメン師匠の肩を打ち、鈍い音がする。俺はゴロゴロと後ろに転がりながら体勢を立て直す。
俺が魔法を使えるようになった時、腕だけ強化してズッコケた。だが剣は振れたのだ。剣を振り攻撃を当て、そのあと反動で後ろに転ぶ。そして体勢を立て直す。昨日はこれをずっとイメージしていた。
必殺技とは言ったが、実践では使えない技だ。剣を振るたびにバランス崩してゴロゴロ転がるとか危なすぎる。
体の部位ごとに魔力を完璧に配分して、戦闘中に魔力移動をうまくやり攻撃速度を上げる。そうすればバランスを崩さずに戦えるかもしれないが、そんなこと俺には出来ない。訓練すれば出来るようになるかもしれないが、俺が戦う相手はモンスターだ。そんなギリギリの戦いでしか勝てないモンスターとは戦わない。
何度も繰り返したイケメン師匠との立ち合いで、一度だけ通用する必殺技だ。二度とは通用しないだろう。しかし一度で十分だ。一太刀いれれば俺の勝ち。
勝った、勝ったぞぉ~。やったよエロシスター、イケメン師匠をやっつけてやったよ!
そんな想いで喜びながらエロシスターを見れば、エロシスターは顔面蒼白だった。
ヨロヨロと駆け寄る先は、ゴロゴロと転がった俺ではなく、肩を怪我してるイケメン師匠。手加減とか出来なかったし、たぶん骨が折れている。
怪我をして苦しげなイケメン師匠は俺に言う。
「すごいなジョニー、もう少し時間がかかると思ってたんだが・・・約束だ、この
俺はイケメン師匠から剣を受け取りながら「シスター」と声をかける。
すると、出会った時に慈愛の微笑みを浮かべていたエロシスターは、目じりを吊り上げてキッと睨みつけてきた。
俺は怖くなって逃げた。
「待ってジョニー」というエロシスターの声が聞こえたが、立ち止まるわけには行かない。
孤児院の部屋に戻った俺は、服や貯めていたお金など必要なものをバッグに詰める。
教会にいた神父様に挨拶をし、教会を出た後は近くに住んでいる人妻信徒たちにも挨拶をする。
孤児院には16歳まで暮らしてもいいことになっている。だが俺は12歳で出ていくことに決めた。
俺は走った。内に潜む闇と戦いながら・・・。
エロシスターに睨まれた時、俺はゾクゾクした。興奮したのだ。
湧き出す闇の衝動を必死に抑える俺。この闇が世界に解き放たれれば大変なことになる。
別に大げさに言っているわけではない。この世界にSMプレイという概念はないのだ。「女王様とお呼び!」なんて言う女はいないのだ。
この世界にSMプレイを広めるわけにはいかない。俺は始まりそうになる妄想を必死に抑えた。
(くそっ、静まれ俺の闇よ!変態じゃない・・・俺は変態じゃないんだ!!)
生まれてしまった闇を封印しながら希望の光を目指す。
(冒険者ギルドに行けば受付のお姉さんに会える。エッチなお姉さんがいるんだ!)
そんな思いを抱えながら、封印されし闇を照らし浄化してくれるであろう冒険者ギルドへと向かうのだった。
しかし、このときの俺はまだ知る由もなかった。
冒険者ギルドにエッチなお姉さんは居らず、おかしなストーカー女に付きまとわれることになるなんて・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます