022, 0-12 幕間・謀略女王の救済
・ルクレーシャ=クロトーの救済
前回のあらすじ
私は正義
私の前には一人の男がいる。どうやら怯えているようだ。
よっぽど怖かったんだね。
私は安心させようと笑顔を向けるも、やっぱりなんか怖がってる。
う~ん、不思議だ。
王宮で人がバンバン死に始め。逃げ出す者たちが現れた。それをグリゼルちゃんに攫わせた。
攫った人たちの身元を調べ、利用できないものは殺した。
家族が使えそうなものは、保護という名目で人質にした。
そして復讐心に燃える有能そうな者たち、今は彼との交渉中だ。
「お前は誰だ!ここは何処だ!俺をどうするつもりだ!」
質問が多いな。しかし私は救済者。できるだけ笑顔で答えてあげる。
「私は、ルクレーシャ=クロトー。ここは後宮の一室です。あなたに復讐の機会を与えましょう」
「ルクレーシャ・・・まさか、あのルクレーシャ=クロトーか?」
実は私、結構有名人なのだ。
ある日突然いなくなった、平民との間に生まれた幼い継承者。
部屋の状況から毒殺されそうになって侍女と逃げ出した。
ここまでは普通だ。
でもいくら探しても見つからない。王都に逃げ出した痕跡はなし、王宮区画の何処にもいない。近衛が入り口塞いでる後宮区画に入れるわけがないし、もちろん王城にもいない。何処にもいない。
だから誰かに殺されて、こっそり死体は処分されたんだろう。ってな感じの話になった。
そのまま忘れ去られるかと思いきや、王宮でバンバン人が死に始めた。一部の者達は現実逃避がしたかったのか、'ルクレーシャの呪い'と言い出した。
そう、私は怪談噺の主人公になってた!
物語の主人公に会って興奮しているのかな。
「復讐とはどういうことだ!」
そんな彼の前に、縄で縛られた継承権保持者を差し出す。
「まさか、こいつが・・・」
「そうです。彼こそがあなたの可愛い妹と、その夫の惨殺を命じた男です」
その一言からすごかった。発狂したのかと言うほどの叫び声を上げながら、縄で縛られた男をボコボコに殴りだしたのだ。
王宮に住んでた王族にも色々いる。
継承権保持して玉座を目指してるもの。
継承権放棄したけど、玉座を目指す継承権保持者を支援しているもの。
継承権放棄して、継承争いには全く関わらず幸せに暮らしていたもの。
彼の妹の夫がそれだ。妹が心配で王宮まで着いてきて、使用人やってた兄がこいつ。
王宮の使用人は貴族だ。だから別に不思議じゃない。
ある日、彼が仕える可愛い妹に会いに行くと、惨たらしく死んだ夫婦の死体があったとか。
犯人探しをするも見つからず、諦めて実家の領地に帰ろうとしていたところを確保した。
もちろん私は何もしてない。ちょっと噂を流したぐらいだよ。
だから縄で縛られてる男が犯人って話も事実。嘘は何一つ言ってない。
縛られた男が死に、満足したのか男は言った。
「俺に何をさせたい」
話が早くて助かる。
「訓練をしてもらいたいの」
「訓練?」
「そう、ちょっと訓練をして強くなったら、この継承争いを終わらせる手伝いをしてほしいの」
「そうか。わかった」
物分りのいい彼をグリゼルと一緒に訓練場へ案内する。
後宮の一角に作ったグリゼルが指導する訓練場だ。
グリゼルひとりじゃ、どれだけ強くても出来ることが限られる。
だからこうやってスカウトしてる。
どこかおかしなこの状況にも彼が素直なのも、私が毒殺されかけたせい。
私は最初の犠牲者。ここは後宮と教えたので、ずっとここに隠れていたと思っているのだ。実際私は隠れてる。
つまり王宮で起こっている殺人に関わっているはずがない。
そして、継承争いを終わらせるのを手伝えと言ってきている。
復讐は終わって無気力な彼は私の手駒に。
うん、順調だね。次行ってみようか。
新メンバー連れてグリゼルと訪れたのは訓練場。
そんな場所で、一人の男がやはり私に興奮している。
う~ん、可愛い私に魅了されてるようだ。
彼の姉が「死にたくない」と王宮から逃げ出したので、私は保護してあげた。
そして王城の魔法使い見習いだった彼に手紙を出した。
あなたのお姉さんを預かってます、と。
感謝の気持を抱えて喜んでやってきた彼も、メンバーに加えることになり、ここで訓練している。
「お前!」
そういいながら近づく彼に、隣の男が止めに入る。
「やめろ。謀略の担い手に逆らうな」
謀略の担い手?私のことかな。
男は隣の男を無視して近寄って来る。
しかし突然痙攣して、その場に倒れた。
私は何もしてない。グリゼルだ。
するとそれを見ていた女が言った。
「彼女に・・・逆らってはいけない・・・」
どうやら、みんなの指導者グリゼルは謀略の担い手の二つ名で呼ばれているみたいだ。
凄いねグリゼル!異名じゃん。
新メンバーはそんな光景を見て、ちょっとビビってるようだった。
やばい、ここブラックな職場だ。
多分そんなこと考えてるけど遅いよ君。
ここを見ちゃったからには、暗殺部隊の一員になるか、死ぬかの二択です。
地獄に耐えて立派な暗殺者になってね。
そんな聖女な私の救済事業も、人が増えるごとに軌道に乗っていき、立派な暗殺部隊が出来たころ、私は8歳になり、王宮の王族は王様だけになった。
最後の締めがはじまる。
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