019, 0-09 幕間・謀略女王の殺意
・ルクレーシャ=クロトーの殺意
前回のあらすじ
私のご飯はおっぱいだ!
私は4歳になった。
急すぎない?と思うかもしれないけど、これでも色々あったのだ。
あの後、変態悪役令嬢に何されるのかとビクビクしていた。
でも何もされなかった。
継承争いで死ぬって思ってるらしいし、自分で直接なにかする気はないのかもしれない。
でも、なんの後ろ盾もない平民の母を持つ私。その母も死んでいて、しかも赤ちゃん。誰も興味がない。
この部屋に来るのはグリゼルちゃんだけ。悪役令嬢のイジメはこれだけみたい。
私のご飯のミルクは、王子様たちの子供についてる乳母にグリゼルがもらってくる。
この王子様の子供たち、つまりは王様の孫に継承権はない。
クロトー王国では王様の子供に、王様が継承権を与える。
幼子で継承権を持ってるのは私だけだ。
解説キャラ、グリゼルちゃんが私の疑問解消のために日々、情報収集してくれる話を聞いていると、本を読みたくなってきて文字を覚えた。
異世界言語のチートは話ができるだけで文字の読み書きには適用されないらしい。
おい神よ・・・ハードにすりゃいいってもんじゃないよ。いい加減、楽させてくれないとキレちゃうよ私。
そんなキレちゃう一歩手前な私は今、鏡で自分の姿を見ている。
(カワイイは正義!私は・・・私は、可愛くない。むしろ怖い)
そう、私は可愛くない。異世界転生小説ありがちの美少女じゃない。
前世で慣れ親しんだアジア系の可愛らしい顔立ち。
これはいい、むしろ安心できる。いきなり外国人みたいになるのもね。
でもそれ以外がね。
異常なまでにドス黒い赤い髪、なんか返り血でも浴びた直後みたいだ。
ここまでならまだいいのだ。ちょっと髪があれだなってぐらいで。
問題は目だ。前世と同じ黒い色・・・のはずが鏡に映る自分の目を見つめていると、なんだか不安になってくる。
前世とはなんか全然違う、見るものを吸い込むブラックホールみたいな色だ。
全体で見るとカラコンしてウィッグつけたコスプレ幼女みたいに見えなくもないけど。
夜道に私みたいな幼女が立ち尽くしていたらどうよ。
ホラーだよ。前世の私が見たら「きゃー」と叫んじゃうこと間違いない。
(カワイイは正義!私は・・・私は・・・正義じゃない?)
そして私はグリゼルちゃんに聞くのだ。
「わたし可愛い?」
「はい、大変可愛らしいです。思わずプニプニしたくなります」
相変わらずプニプニしてくるのだこの少女。でもプニプニ好きな少女が言うなら間違いないよね。
(カワイイは正義!私は正義!!)
私の見た目が異常に怖いのにも理由がある。
おそらく先祖に
おとなじゃないよ。おおびとだよ。
でも
本を読めるようになった私は、グリゼルちゃんに頼んで図書室から本を持ってきてもらい、一緒に色々調べた。
体が大きいだけで魔法が使えるようになる仕組みは普人と一緒。
そして、彼らが生きてた時に世界で幅を利かせてたのがエルフ。
今でこそ普人は自分たちで魔力感知を出来るけど、それはエルフの血が混ざったから。
大国を築いた普人と違って、体も大きくて生意気だった
種族の特性としては体の大きさだけじゃなくて、色素が濃い目や髪が多いそうだ。例えばドス黒い赤髪とか。
そんな私、全然体が大きくない。身長は普通だ。
幼い頃から魔法が自然に使えたらしいグリゼルちゃんも別に耳は長くない。
これは、ハーフ系種族がいないのが理由。
エルフと普人が結婚して子供が生まれても、エルフの子供か普人の子供しか生まれない。ハーフエルフとかいない。
ただし全く親に似ないのかって言うと、ちょっとだけ特性を受け継ぐそうだ。
普人の子供なら、エルフの特性を受け継いで、寿命が伸びたり、魔力量が増えたり、魔力干渉が出来るようになったり。いい事ばっかり。
エルフの子供なら、普人の特性を受け継いで、寿命が減ったり、魔力量が減ったり、魔力干渉がちょっと下手になったり。やな事ばっかり。
エルフ損しかないよね。実際、エルフの国は今でも大国の一つだけど、かつて世界を支配していたらしい。さすがイケメン種族。
そんな理由で、普人とエルフの中はちょっとだけ悪くて、魔法チートパクられないように警戒されている。普人の国にいるエルフは少ない。イケメン種族に会いたい私としては残念な独自設定。
こういう面倒な設定は読者が面倒くさいって思って読むのやめちゃいますよ神様。そこんとこ考慮して私とイケメンエルフのカップリングお願いしますね。軽い感じで神に祈る私。
ちなみに、王妃様のピンク髪は
体がちっさい私弱えぇ!と必死に生きることを考えていたら、予想外に繁栄した種族。
色んな国のいろんな種族に頭を下げて集落を築き、体の小ささを活かした細々とした仕事をしてるとか。
普人の国にもいたらしいけど「ピンク髪を探している」というわけのわからない情報に危険を感じ、いなくなっちゃった。
色素が薄い目や髪が多いそうだ。
普人との間には子供が生まれにくい特性を持っているらしくて不妊原因はこれでしょ。
ちっちゃくないよ。
見たくもない自分の姿を久しぶりに鏡で見ていた理由。
正義な私のもとに新メンバーが来る。
悪役令嬢のイジメのせいで私の周りには誰もいない。
4歳だし流石にそろそろ必要だよねってことで同情した王族が、乳母からのグリゼルちゃん経由でつけてくれることに。
流石にもう普通のご飯を私は食べてる。食事を運んでるグリゼルちゃんを見てわざわざ声を掛けてくれたとか。
王族いい人たちじゃん。
そして、やってきた
そこそこ楽しく会話して、お茶を入れてくれた。そのお茶には毒が入っていて、私は倒れた。
(死にたくない・・・)
車に轢かれた私は地面に倒れてそう思っていた。
即死じゃなかった。痛みはなく、体からなにか流れ出ていく感覚だけがあって、それが自分の命のようだと思った。痛みはないのに苦しかった。
(死にたくない・・・お父さん・・・お母さん・・・)
遠くなっていく意識の中で、気づくと私は転生していた。
そんな前世の死に際を思い出していると、私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
「ルクレーシャ様!死なないでください!私を一人にしないでください!」
目を開けると必死で叫んでいる少女がいた。グリゼルだ。
最初は、なんでこんなに必死なんだろうと思った。
彼女は幼い頃に両親が死んで、村長に売られて、王宮で4年間私を育てていたのだ。
私の育ての親だ。彼女にとっての私はなんだろう。
「グリゼル」そう呼ぶ私に「よかった」と「目を覚まさないかと思いました」と「
視線を動かし探すと
グリゼルがやったみたいだ。
彼女は私を愛している。
思わず人を殺してしまうほどに。
だからそんな彼女を・・・私は利用することにした。
今までも色々頼んだし、わがままも言った気がする。
でもそれは、あくまでお願いで、無理のない範囲にしていた。
知りたいことはたくさんあったけど、危ない場所には近づかないようにさせた。
「グリゼルは私のこと好き?」
「はい、大好きです」
「私のこと愛してる?」
「はい、愛しています」
「私死にたくないの。だからグリゼル協力してくれる?」
「はい、何でもいたします」
グリゼルは何でもしてくれるみたい。
私は怒っていた。適当なタイミングで継承権を放棄すれば安全だと思っていた。
でも彼女は私に毒を盛った。私を殺そうとした。
前世の私は車に轢き殺された。
前世のことだからどうしようもない。
だから考えないようにしていた。
でも今生は違う。
(全員ぶち殺してやる)
私はキレた。
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