013, 0-03 幕間・生意気男子の恐怖

・デュークの恐怖


前回のあらすじ

 石投げだ、石投げのジョニーだ!



父さんと母さんを何度呼んでも「う~う~」と苦しそうに言うだけで起きない。

揺すっても叩いても起きなかった。


俺はどうしたらいいかわからなくなって、しっかり者のアデラの父さんに助けてもらうことにした。



アデラの家に行くと家の前でアデラの父さんも倒れていた。

俺はそれを見て怖くなった。もしかしたら俺以外みんな目が覚めないんじゃないかって。

でもアデラの家から泣き声が聞こえて、それがアデラの声だと気づいて急いで家の中に入った。

アデラの母さんは布団で寝ていた。アデラはその前で泣いていた。



泣いているアデラから何があったのか聞くと、アデラの母さんが目覚めなくて、アデラの父さんが村長を呼んでくると言って家を出ると倒れたってことだった。

俺はアデラを励ましながらアデラの父さんを布団に寝かせることにした。

アデラと一緒に、がんばって、ひっぱって、家の中まで運んで布団に寝かせた。

アデラは泣き止んだけどアデラを一人にしたくなかった。

でも父さんと母さんが心配でアデラを置いて一人で家に帰ることにした。



家で寝ている父さんと母さんを見ると急に涙が出てきた。

拭いても拭いても止まらなくて俺は大きな声で泣いてしまった。

俺の家とアデラの家が離れていてよかったと初めて思った。


そして俺はひさしぶりに母さんと一緒の布団で眠った。



次の日の朝も父さんと母さんは目覚めなかった。

俺はアデラの家に行った。アデラの父さんと母さんも同じだった。



次の日も同じで同じようにアデラの家に行ったけど何も変わらなかった。

他の友達も気になったけど見に行く元気はなかった。

アデラの家から帰る途中、なんだか頭がぼーっとして、おなかが痛くて苦しくて、俺は死んじゃうのかなと思いながら地面に倒れた。



「デューク、デューク」と俺を呼ぶ声がして目を覚ます。

死ななくてよかったと安心すると目の前には涙目のアデラがいた。

俺はどれくらい寝てたのかなと思ったけど、それよりアデラに心配をかけてしまったことを後悔してなにか言おうとしたら「ジョニーがよんでる」とアデラが言った。



広場に行くとジョニーと友達みんないた。

友達が無事でよかったと思ったけど友達みんな元気がなかった。俺もアデラも元気がなかった。

でもジョニーは違った。


「死体を集めるぞ!」

ジョニーは大きな声で言った。

俺はこのとき父さんと母さんは死んじゃったんだなと気づいた。

「死体を集めるぞ!」

ジョニーはまた大きな声で言った。

「なんでそんなことしなきゃいけないんだよ」

俺がそう言うとジョニーが近づいてきて叩かれた。

そしてまた大きな声でジョニーは言った。

「文句を言うな!死体を集めるぞ!」

みんな怯えていた。



俺たちはジョニーに逆らえずジョニーの言うとおりに二人で死体を運ぶことにした。

俺はアデラと一緒が良かったけど「お前は俺と来いと!」言われてジョニーと一緒に死体を運ぶことになった。


ジョニーの家に行く。ジョニーの父さんと母さんは死んでいた。

ジョニーも悲しいのかなとジョニーを見てもジョニーはいつもどおりで俺はどうしたらいいのかと思っているとジョニーは「運ぶぞ!」と言って死体を運び出した。

俺もジョニーを手伝って、ジョニーの父さんと母さんを広場まで運んだ。


ジョニーはジョニーの父さんと母さんを並べて手を繋がせると、手を合わせて目をつぶっていた。

そしてすぐに目を開けると俺に「来い!」と言って歩いていってしまう。俺は必死に追いかける。


そしてジョニーの隣の家とジョニーが仲の良かった狩人のオジサンを運ぶ。

ジョニーは死体を運ぶたびに手を合わせて目をつぶっていた。それで気づいた。

ジョニーはお葬式をやろうとしてるんだ。



母さんに聞いたことがある。人はいつか死んでしまうと。

俺は死ぬのが何なのかわからなかったけど目が覚めなくなることだと母さんは言っていた。

そして人が死んだ後はお葬式をやってお墓を作るのだと。

俺はなんだか怖くなって母さんも死んじゃうのと聞くと『ずっとずっと先の話よ』と言っていた。そう言っていたのに・・・。

母さんは嘘つきだ!



でも俺はそんな嘘つきな母さんといつもぶっきらぼうな父さんのお葬式をしてあげたくなった。

「俺の家も」と言うとジョニーは何も言わずにうなずいた。

俺もジョニーがやったように父さんと母さんを並べて手を繋がせる。

父さんと母さんが起きなくなる前の日父さんと母さんは喧嘩していた。

ちゃんと仲直りできるかな。そう思うとなんだか悲しくなって涙が出てきた。

ジョニーに見られたくなかった。ジョニーはいつの間にかいなくなっていた。



俺が泣き止んだころジョニーが戻ってきた。

それからまた死体を運んで広場に戻るとジョニーが村長のポケットに手を入れた。

けどもうジョニーが何をやってるのか考えるのはやめることにした。



村で死んだ大人にジョニーが何かをかける。

なんだろうと見ていると火打ち石でジョニーが火をつけた。


父さん、母さん。ジョニーはなんでこんなことを・・・。

みんなが泣き出し俺も泣いた。

そしてジョニーは言った。

「お腹が空いたなぁ」

アデラの「ひっ」という声が聞こえた。

でも俺はジョニーから目を離せなかった。



母さんは言っていた。世の中には悪い人がいるって。

悪い人ってどんな人と聞くと『悪魔が人になりすましてるのよ』と母さんは言った。

悪魔ってどんな人と聞くと『普通の人が思いつかないような、とても、とても、酷い事をする人よ』と言っていた。



俺はジョニーの顔を見る。

いつもと同じイケメンだった。

でもそんなジョニーの顔は炎で照らされていてどこか不気味だった。


ジョニーは悪魔だった。

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