第39話 関取と弟子

5日前ぐらいに、背中の筋を痛めた私。

前にかがむのはなんともないが、後ろに手をうまく回せない。

んぐぐぐぐ、と頑張ってストレッチなんかしてみたり、湿布薬を塗ってみたりしてるんだけど、なかなか治らない。


風呂に入った時に、ザラザラタオルにボディソープを泡にして、ぁよっこらせと背中にタオルを回し両手にタオルをもって斜めにタオルを上下左右に。そうやって背中を洗うのだけど、なんかいまいち力が入らずスッキリしない。


「ちょっと、わるいんだけど、背中洗ってくんない?」

「いいよ」

洗面所の方に背中を向けて

「すんませんね」とタオルを渡すと

ゴシゴシ洗ってくれながら

「力士…」と

あいつがつぶやいたのです。


そう言うと思ったよ。

でも、痒い所に手が届かない今の私はそんなの聞こえないふりだもんね。

「わりーね。肩甲骨のあたり、もっとしっかり洗っとくれ」

「ごっさぁんです」

「…」

いいのいいの。

今日は何言われても聞こえないから。



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