第89話ダンジョンでデート 其の一
「ん…… んふふ……」
フィーネが俺の腕枕で気持ち良さそうに眠っている。裸でだ。
いかんな、最近毎日している。四十になったってのにな。
もう若くないんだからこうも盛るのはどうかと……
「ほら、フィーネ。起きな。朝だぞ」
「んむぅ…… ライトさん…… 好き……」
寝ぼけながら耳を噛んでくる。いてて。
「こら、耳を噛むんじゃない。今日はダンジョンに行くんだろ? 起きな」
「ん…… ふぁーい…… おはようございます……」
フィーネは眠そうにベッドを抜け出す。
地下なので日の光は入らないが、蝋燭の灯に照らされるフィーネの肢体……
こういうのを眼福っていうんだろうな。
「ん? どうしました?」
「いや…… 何でもない……」
「んふふ。ライトさんのエッチ」
そう言うなら前を隠せよ。
「ふざけてないで準備して」
「はーい」
フィーネはいそいそと着替え始める。
服を着て、鎧を装着。剣を履いて…… 準備完了。
俺は鎧を着るだけなのでもう準備は終わっている。
そうそう、行く前に桜に付与効果を付けてもらわないと。
桜とチシャの部屋に行く。もう起きてるかな?
扉をノックすると返事が返ってきた。
「おはよ。もう起きてたんだな」
「うん! 今日はやることがあるからね。パパ達はもうダンジョンに行くの?」
「あぁ。それなんだが……」
「分かってるよ。踊るんでしょ? いいよ」
桜がお得意のバレエを披露してくれる。
足を高く上げてくるくると踊る。見事なもんだ。
ひとしきり踊るのを見てると体に変化が……
どんな付与効果が付いたのか。確認してみよう。
名前:ライト シブハラ
種族:人族
年齢:40
Lv:78
HP:135427 MP:181220 STR:115402 INT:165821
能力:剣術9 武術10 創造 10 料理10 結束 分析10 作成10 障壁10 閃光10
魔銃10(ハンドキャノン ショットガン ロケットランチャー スナイパーライフル アサルトライフル TLS)
亡き妻の加護:他言語習得 無限ガソリン 無限メンテナンス 無限コーヒー 無限タバコ
New! アルブの恩恵8(フィーネと性交渉をすると発動。致死攻撃回避、MP自動回復、フィーネの能力を一つだけコピー可能) 幸運(中レベル)
よし、きちんとは付与効果が付いて……
ん? レベルが上がってるな。そういえばナタールで戦いがあったもんな。
そこで経験値をゲット出来たわけか。
あと見慣れぬ能力が……
アルブの恩恵。相変わらず発動条件がアレだな。
フィーネの能力をコピーか。なら選ぶのは一つだな。
収納魔法だ。あれがあると便利なんだよね。
「…………」
ん? 俺を見て桜が顔を赤くしている。
「桜? どうした?」
「な、なんでもないよ……」
俺を見て顔を赤くする。よそよそしい態度……
分かった。桜も分析で俺を見てるんだな?
やべ、俺も恥ずかしい。微妙な空気が流れる……
「…………」
「…………」
「そ、それじゃ行くわ」
「いってらっしゃい……」
桜と別れ地上に上がる。
フィーネと関係を持っていることは桜も何となくは知っているはずだ。
しかし、それがありありと文字に表れるのを見せられたらね。
子供の桜にとって刺激が強すぎたかもしれないな。
外に出て空を見上げる。
いい天気だ。良すぎるぐらいだな。
アスファル聖国は砂漠の国だ。太陽光が肌に刺さるようだ。
今日も暑くなりそうだな。
フィーネにバイクを出してもらい二人で跨がる。エンジンをかける前に……
「そういえばダンジョンはどこにあるんだ?」
「東に三十キロぐらい行ったところだって聞きました。岩山が目印だって」
三十キロか。少し飛ばすか。アクセル全開!
ドルンッ ブロロロロッ!
「行くぞ! 掴まってろよ!」
「きゃー!? 速すぎです! もっとゆっくりー!」
キャーキャー言うフィーネの悲鳴を聞きつつバイクを走らせること三十分。
地平線の彼方に岩山が見えてくる。あれだな。
いや…… 岩山にしては形が……
おかしい。綺麗すぎる。違う。岩山じゃない。あれはピラミッドだ。
もの凄い大きさだな……
エジプトにあるピラミッドは最大で百五十メートルはあるという。
だがこれは…… その倍はあるのではないだろうか?
「フィーネ。これが噂のダンジョンなのか?」
「……? え、あ、はい? どうしましたか?」
混乱してる。いかん、急いで来すぎたな。
時速は百キロを超える時もあったし。
バイクに慣れてきたとはいえ、今までで一番スピードを出してしまったかもしれん。
フィーネをバイクから降ろす。ちょっとよたよたしてるな。
「ライトさんのバカ…… 怖かったんですから……」
「ごめんな。調子に乗りすぎたよ。少し休んでから行こうか」
日射しを遮る日陰は見当たらないので作成を発動して簡易的な小屋を作る。
その中に入って一休みだ。
「フィーネ、水を頼む」
「はい」
収納魔法で水筒を取り出す。
他にもサンドイッチに葉野菜のサラダもだ。
「もうお腹空いたのか?」
「はい! それにダンジョンに入ったら落ち着いて食事が出来ないはずですよ。今の内に食べておきませんか?」
朝しっかり食べてきたからあんまりお腹は空いてないのだが。まぁいいか。
少し早めに昼食をとる。まずはサンドイッチを…… これは……
カツサンドだな。パンの間にはソースに浸けたカツ。刻んだキャベツ。
これは美味い。惣菜パンの中ではこれが一番好きだな。
「美味いな。まさかカツサンドが食べられるなんてね」
「んふふ。サクラに聞いたんです。ライトさんはこのサンドイッチが大好きだって」
フィーネも美味しそうにカツサンドを頬張る。
「うふふ。楽しいですね」
「おいおい、ピクニックに来たんじゃないんだから……」
「いいじゃないですか。ライトさんと二人っきりになれることなんてあんまり無いですし」
「そう? 寝る時は二人っきりじゃん」
「それとは別なんです! サクラとチシャがいる時も楽しいけど…… たまにはライトさんを一人占めにしたくって……」
なるほどね。
確かにフィーネと二人っきりってことはあまり無かったかもしれないな。
たまにはこういうのもいいよな?
フィーネとサンドイッチを食べながらしょうもない話で盛り上がる。
「それで!? 奥さんとはどこで告白したんですか!?」
「近所のラーメン屋だよ。凪はポカーンってしてたけどな。でも大笑いしてからOKしてくれたな。はは、今思うとラーメン屋で告白なんておかしいよな」
「ふふ、本当におかしいですよ。私のこと好きって言ってくれた時もカレーを食べながらでしたし…… ライトさんって何か食べながらじゃないと告白出来ないんですか?」
「そうかもな」
サンドイッチを摘まみながら会話を楽しむ。
はは、これは間違いなくデートだな。
でもいつまでも楽しんではいられない。
ここに来た目的はダンジョンで魔物を倒しドロップ品を手に入れることだ。
「フィーネ、そろそろ行こうか。そういえばこのダンジョンの情報だが、何か聞いてないか?」
「いえ…… ですが、クロンさんが言うにはこのダンジョンに入った者は誰一人戻ってこなかったそうです…… あ、それと通常ダンジョンは地下に続いてますが、このダンジョンは上に上がっていくみたいです」
上か。最上階にダンジョンマスターが要るんだろうな。
油断はしないが、フィーネと二人なら安心だ。
こうしてフィーネと共に戦うのは久しぶりだな。
「それじゃ行こうか。なるべくなら今日中に帰りたいからな」
「はい! ふふ、ライトさんとなら楽勝ですよ!」
楽しそうにフィーネは笑うのだが、ここからは気持ちを切り替えていくかね!
俺達はダンジョン、いやピラミッド内部に続く通路を通る。
さてこの中にはどんな魔物がいるのだろうか。
どんなやつが出てきても返り討ちにしてやるさ!
そして金をいっぱい稼ぐぞ!
でも五十億オレン分のドロップ品か……
ちょっと鬱だな……
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