第51話 不潔

五十一

 小学校三年生の時でした。人間には男と女という区別があることをはっきり理解しました。というのも、男は男同士で群れをつくり、女は女同士で群れをつくるという人間の習性をつかんだからです。同じ生き物だから、男女の垣根なく、仲良くすればよいのにと大人びた意見を持っていました。


 しかし、僕はどちらの群れにも所属することができませんでした。他者とどういうコミュニケーションを行って、仲良くしていけばよいのかが分からないのです。どういうタイミングで相槌を打ち、どういう話題を話せば良いのかが皆目見当がつかないのです。つまり、他者に興味が湧かないのです。


 それと同時に、僕は他者を軽蔑していました。こんなヤツらを相手にしていられないと口に出さないまでも、心の奥でずっと思っていました。


 しかし、寂しいのです。僕は他者に興味がないけれども、孤独を癒したいという矛盾した想いを抱えていました。しかし、これといって、行動を起こすつもりなく、孤独な日々が続くだけでした。


 そんなある日、小さなことをきっかけに僕は人間嫌いになりました。トイレの掃除をしていました。誰も便器の掃除などしようとはしませんでした。そこで、じゃんけんで負けた人が全ての便器を掃除することになりました。運が悪く、僕は便器を掃除することになりました。


 汚い便器を一人だけで掃除しました。そのうち、他の男子はどこかへ行ってしまいました。それからというもの、僕は一人で便器を掃除することになりました。嫌なことは全部、僕に押しつけて、他の男子はほうきで下らないチャンバラをしていました。


 そのうち、僕は「うんこ」と呼ばれるようになりました。

「なあ、うんこ、そこやっといて」

その声の後に、他の男子がどっと笑いました。屈辱感を味わいました。


 僕は何も言い返すことができず、便器を掃除しました。


 掃除のときについた「うんこ」というあだ名が、クラス中に知れ渡るようになりました。このあだ名のせいで、僕には人が寄り付かなくなりました。僕のそばによると、わざと「臭い」と言って、通り過ぎる人もいました。


 僕は家に帰ってから、シャワーを浴びました。それでも、自分の体が臭いような気がしました。そこで、僕はボディ・ソープを使って、体を入念に洗いました。それでも、自分から変な臭いがします。僕はまたボディ・ソープを使って、体を洗いました。いつまで経っても、不潔な感じが拭えないのです。

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