ケイタ パート3

第37話 自慰

三十七

 先生を見送ったあと、僕はずっと空想に耽っていた。けれども、かえって虚しくなるばかりだった。脳に描かれるイメージだけでは物足りなくなったのだ。


 僕はスマホに手を伸ばした。先生に似ているモデルやアイドルの画像を見ていた。美しいことには美しいが、先生の持っている美しさには到底及ばなかった。次第に、飽きてきてしまった。


 僕は枕を抱いた。枕を抱いているうちに、下半身が大きくなっていった。そのうち、僕は自然と枕を両足で挟み、下半身を枕に押し当てていた。それだけでは、満足がいかなかったのか、僕はズボンを脱ぎ、枕をどかした。


 左手で根元を押さえ、右手を上下に動かした。


 けれども、僕はしてはならないことをしていることに気づいた。僕は罪悪感を抱いた。けれども、小さくはならなかった。理性に反して、先生の茶髪とうなじが頭によぎった。それは脳裏に焼き付いて離れなかった。


 お前は間違っている。どこからともなく、そんな声が聞こえそうだった。そうだ、僕は間違っている。


 けれども、誰も僕のこの忌まわしい姿を見ていないような気もした。僕は誰にも迷惑をかけていない。だからといって、誇らしいことをしているわけではない。僕は我に返って、ズボンを穿いた。それでも、大きいままだった。


 どうしたら、この淫らな気持ちは許されるのだろうか。いや、誰も許してはくれそうにない。どうしたら、この気持ちから解放されるのか。出会った時のたんなる憧れという気持ちに戻りたい。出会った時は、たんに美しいと思っただけなんだ。


 会うたびに憧れのようなものから、卑しいものへと変わっていった。僕はそれに気づきながらも、そんな気持ちなどないと自分に言い聞かせていた。けれども、もうその気持ちをはっきりと自覚するしかなかった。僕は限界にきていた。


 先生には常に男の影があった。なんらかのロマンスを何度も経験したかのような妖気があった。その妖気は僕の嫉妬を煽った。嫉妬すれば嫉妬するたびに段々と先生に惹きつけられていくような気がした。


 どうして、ヒトノモノって、こんなにも美しいのか。どうして、こんなにも欲しいと思わざるをえないのか。自分が醜い。


「気持ち悪いよ」

先生の声が聞こえた。本当にその通りだった。けれども、まだ大きいままだった。

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