第27話 図星

二十七

 次の日のことだった。


 「藤原さーん」

「おはよう。本田くん、どうしたの?」


 藤原はいつものように本を読んでいた。けれども、本田が来ると本に栞を挟んで、本田の方へ視線を向けた。


「聞いてもらいたいことがあって」

「オレに?」

「はい」

「フーン」

「久しぶりに高校時代の友達に会ったんです」

「ほう」

「その友達は大学には行かないで、働いているんです。でも、本当は大学に行きたいと思っていたみたいなんですよ」

「じゃあ、どうしてその友達は大学に行けなかったの?」

「経済的な事情で」

「なるほどね」

「彼の話を聞いているうちに、僕はこれでいいのかと思って」

「どういうこと?」

「せっかく、大学まで行ったのに、これといって何もできていない気がして。それに、友達は嫌々働いているんです」


「どうして、君が悩む必要があるの?」

「そう言われれば、そうですけど」

「君は優しいんだねえ。君は友達の話を聞いて、今の自分の境遇に対して負い目を感じたのだね。別に他人のことなどどうでもいいじゃないか」

「そういう風には思えなくて」


「なるほどねえ。やっぱり、優しい人だ。だが悪く言えば、君は自分の問題と他人の問題を混同しているよ。君が彼に対して何かを感じても、彼には何の慰めにもならない」


 本田は黙るしかなかった。本田は藤原の態度が冷淡だと感じた。もう少し、寄り添ってくれてもいいような気がした。


「ごめんね。少々、言い過ぎた」

藤原は本田の心情を察した。

「まあ、藤原さんの言う通りだと思います」


「もしかして、君は友達の悩みを聞いていたのかな。けれども、君はその悩みに対して有益な助言をすることができなかった。だから、君はそのことを悔いている」

「友達は仕事場でうまくいっていないようなんです。けれども、仕事を辞めるわけにもいかないといった具合で。でも、僕はこれと言って何も言ってあげられなくて」

「そういうものさ。他人には他人なりの苦しみがある。そう簡単に分かってあげることも、癒してあげることもできないものさ。だからといって、そのことに負い目を感じて、君自身が悩む必要はないよ。普通に大学生活を送ればいいよ」

「そういう風に割り切れないです」


「そうかい。多分、そういうところが君のいいところなんだよ。だから、その友達以外にも相談を受けることが多いんじゃないか」

「そうですね。長電話をすることもあります」

「いろんな人の相談を受けてきたわけか。でも、君は誰にも相談できないんだね。だから、オレのもとに来たんだねえ」


 本田は図星をつかれたような気がした。


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