第26話 魅力

二十六

 藤原は規則通りに生きる男だった。藤原は大学の中にあるコンビニで朝食を食べていた。その時にも、藤原はテーブルの上に本を上げていた。そこに、本田はやってきた。


 「本田くんは、物好きだね」

「何がですか?」

「オレなんかとよくしゃべるから」

「楽しいですよ。藤原さんとしゃべるの」


 本田は藤原の知的で物憂げな様にどこか惹かれていた。藤原の表情はニコニコしているにもかかわらず、どこか悲哀を帯びていた。


「本当かい?」

「楽しくなかったら、わざわざ来ませんよ」

「そうなのねえ」


 藤原は納得がいかないといったように眉間にしわを寄せた。

「本田くんは友達がたくさんいるでしょ」

「まあ、いないことはないですけど」

「やっぱりねえ」

「何がやっぱりなんです?」

「本田くんは体から放っているオーラが良いから、人に恵まれそうに見える」

「そうですか?」

「なのにどうして、オレのところに来るの?」

「悪いですか?」

「いや、とても嬉しいよ」

「じゃあ、なんでそんなことを言うのです?」

「単純に君みたいな人がオレのもとに来るのが不思議なだけさ」

「なんでですかね」

いざそう言われると、本田は藤原のもとに行く理由が分からなかった。

「まあ、別にいいけどねえ」


「藤原さんって、めっちゃ、本を読みますよね?どうして、そんなに本を読むんですか?」

本田は話題を変えた。

「まあね。そりゃ、寂しいからさ」

「寂しいんですか?」

本田の意図に沿わず、暗い話になった。


「毎日、毎日寂しいよ。だから、こうして本を読んで、自分の世界に引きこもっているんだ。やばいねえ、暗い話になっちゃうねえ、このままだと」

藤原は無理に笑ってみせた。


「藤原さんって、ネガティブですね」

本田も笑ってみせた。

「仕方ないだろ。こういう星のもとに生れたんだから、来世に期待するしかないか。ハ、ハ、ハ」

ジョークのうちに切なさがこもっていた。


 本田はその切なさを知りつつ、声を出して、笑った。本田は藤原が持つこの暗さが好きだった。


「寂しいこと言わないでくださいよ」

「すまないねえ。こういうキャラで20年間生きてきたもんでねえ」

そう言って、藤原はゲラゲラ笑った。

「いいキャラだと思いますよ」

「本当かい?オレは自分の性格のせいで損をしているがねえ」

「そう思っているだけじゃないですか?」

「さあね。客観的に判断できることではないよ」


 なんだか、本田は藤原に突き放された気がした。それでも、謎に満ちている藤原に対する興味が湧いてきた。本田は藤原の中にある暗さの理由が知りたくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます