第109話『下準備』



 死者行方不明者九三三人。軽傷・重軽傷者二二六一人。


 テロが起きてから二日目を迎え、『ユーストル・世界同時多発テロ』と名付けられた事件は、異地社会においてのテロ事件として史上最悪を記録した。



 不眠不休の調査にて被害地域は日本、イルリハランを始め十六ヶ国。爆破ヶ所で言えば三十八ヶ所に及ぶことが分かった。


 メインとなったのはユースメミニアス式典会場で、他三十七ヶ所は小規模で部屋一つ、浮遊艇一台程度を破壊する程度に留まる。


 その式典会場と他三十七ヶ所は全くの同時刻に爆破した。昼夜問わず同時だ。


 中には宮殿や大統領執務室など、一般人が立ち入ることが出来ないところも爆破され、各国の捜査当局は混乱していると言う。


 被害者は式典会場を除くと全員現職か退職、異動をした政府関係者で、特筆すべきが被害各国の現、元首脳が全員亡くなっていることだ。


 つまり十六ヶ国の首脳が軒並み殺されたことになる。



 異地社会にもテロリズムはあるが、十六ヶ国の首脳を含む千人近い人が殺された事件はない。


 文字通り世界史上最悪のテロ事件となり、世界各国が即日で哀悼の意や声明を発表したりし、メディアは日本転移以来のテロ事件一色となった。


 イルリハラン王国は予期しない強制的な政変を行った。国王及び王位継承権第一位が逝去されたことで、第二位であったリクト王弟の長男であるソレイ・ビ・イルリハランが国王に即位した。


 イルリハランの法では未成年王室が国王になることに特に規定はないため、未成年でありながら国王が誕生した。ちなみにイルリハランの歴史で十五歳未満が国王に即位した例はない。




 そして世界中の誰もが気になる首謀者だが、容疑に挙げられる組織は存在していない。


 テロ組織こそ存在しても、これほどの規模のテロを実行できる人材を有する組織が存在しないのだ。ましてや世界中の警護を掻い潜り、首脳や式典会場に爆薬を仕掛けるほどなら、当然当局が厳重にマークしている。


 実行犯の実態も手段も分からないまま、しかし時間だけは無情にも流れていった。



「羽熊さん、バーニアンのことですが、若井新総理に伝えますか?」



 爆破テロ二日目の午前。羽熊は再びエルマの病室へとやってきて秘密会議を行っていた。


 仮説であるが、バーニアンが絡んでいる可能性がある以上、羽熊とエルマは二人っきりで話し合いをしなければならないからだ。


「話すかどうかはバーニアンかどうかの証拠が出てじゃないかな」


 現時点で最高指導者である若井総理に世界の闇を知らせる必要はあるのだが、もし知っている人間を犯人が狙っているのであれば不用意な漏えいは出来ない。知ってしまうと命を狙われてしまうからだ。



「気持ちとしては捜査機関の中で捜査は情報共有したいですけど、犯人がバーニアンを知っている者を狙っているならターゲットを増やすだけになる」


「私も同じです。逆にバーニアンを知っている人を狙ってないなら悪手になりますしね。けど、バーニアンの情報を知ってるか知ってないかで捜査方法も違うのも事実です」


「間違った方向に進めてしまうこともありえる。バーニアンだけでなく、あの表向きでも知られている超会議に参加していた国々が襲われたのだから、バーニアンと決めつけてしまうと間違った結論になってしまう」


「……表向きの捜査記録から判断するしかないですね」


「問題はどう記録から判別するかか……」



 羽熊もエルマも世間には公表されない記録を見る立場だから、秘密裏にバーニアンが関与しているのかを探ることが出来る。


 しかし、何をもってバーニアンが関与しているかを探るかが分からない。


 前提として犯人の狙いがバーニアンを知る人間として、どうやってその知っていることを知るかだ。


 確たる証拠として残っていればいいが、それは同時に捜査機関も知ることになる。


 このテロでほぼ一網打尽にするほど用意周到で実施したのに、バーニアンを知る人間を狙っている証拠を残すとは到底思えない。


 つまり、表向きの捜査報告だけではその裏にあるバーニアンを知る者を狙っている確証が得られないのだ。


 逆に、捜査部隊がバーニアンを知っていればその前提で動くから確証を得られやすくなるが、それをすると犯人側のターゲットを増やす上に、世界の秘密を流出させてしまう。



「究極の二択ですね。安全と危険、どっちを選ぶか」


「安全だと遅く、危険では早く分かる」


「結晶フォロンか、バーニアンか」



 羽熊は腕を組んで考える。


 式典を狙うなら結晶フォロンを独占している日イに恨みを持つ国と考えられるが、それでは各国の要人までは至らない。あの超会議で確かに日本の国家承認の基礎を築いたとはいえ、狙うならその国だ。


 逆にバーニアンであれば秘密を知る人間として狙われる道理となる。


 可能性としては後者としても、前提とするにはリスクがあまりにも高い。


 情報流出だけでなく、率先して命を狙われる可能性もあるからだ。



「……羽熊さん、どうせ私たち二人しかいないんです。多数決をしませんか?」


「多数決をするには一人足りないけど?」


「多分、同数にはならないでしょう」


 どうやら羽熊とエルマは同じ結論に達しているようだ。


 羽熊とエルマは息を合わせて答えを出し合う。



「「バーニアン」」



 二人しか知らないからこそ出せる危険で身勝手な最適解だ。


「リスクは承知してますが、個別に秘密を知る要人が狙われている以上、確証はなくても間違いはないです」


「これは己惚れもあるけど、六年前の外交戦で自分の直感には助かったから今回も従ってみたい」


 最悪バーニアンの情報が世界中に流出してしまうが、羽熊の勘で言えば間違ってないだろう。


 もちろん話す相手は慎重に見極めなければならない。


「私も羽熊さんの勘を指示します。ああ、もちろん全責任は私が取るので、万が一情報が漏えいした時は私に丸投げしてください」


「そんなことできるわけないでしょう。二人しかいないんですから私も背負いますよ」


 友人にそこまでの重責を背負わせるわけには行かない。立場上背負うべきだとしても、羽熊とて男だ。丸投げして逃げるほど腐ってはいない。



「ありがとうございます」


「少なくともバーニアンを教える人は厳選するしかない」


「それこそ少数精鋭でですね」


「……通常の捜査機関とは別に、別ルートで探る部隊を結成してするか」


「ですね。表向きはシルビーに任せ、その裏では……私たちが最も信頼できるメンバーに任せましょう。日本政府側はどうします?」


「命の危険があると忠告をした上で若井総理に知るか聞いてみるよ。イルリハラン政府は……まあ無理か」


「王位継承権がソレイ途切れてしまっているのでまず言えません。テロの首謀者がリーアンであれば日本にいれば安全でも、フィリア側なら常に危険が伴うので」


「けど独立組織を作るならそれなりの権限を持つ人がしなければならないのでは?」


「そこは上手くソレイに話しをして私に権限を与えてもらいます。越権行為ですが、ソレイに負担は掛けられません」


「王権を影から利用してるとか悪い噂が立たないかそれ」


 王自身に判断力がなく、宰相が影から操っている王国乗っ取りのテンプレだ。



「その誹りは甘んじて受けるつもりです。自分の悪評で信頼できるメンバーが集まれるなら安いものですよ」


「……もし若井総理が許可してくれれば、日本側の派遣として協力に行けるけれど」


「羽熊さんまでフィリアに近づくのは危険です。境界線近くにいることすらミサイルの攻撃を受ける可能性がありますからね」


 フィリアの兵器では日本の任意の場所にミサイルを着弾させることは難しいが、境界線付近であれば最終誘導は可能だ。その前に天自の防衛システムに引っかかるとしても、境界線近くにいるのは得策ではない。


「羽熊さんは安全な東京にいてください。原因が何であれテロを起こしたのは間違いなく我々リーアン側なのですから。情報の保全の意味も兼ねて生き残ってもらいたいのです」


 危険と分かっているからこそ、確たる安全を保障する方法をエルマは提案する。


 おそらく情報の保全だけでなく、家族のためにも生き残らせようとする気づかいだ。


「分かった。そうさせてもらうよ」



 これは羽熊の憶測だが、エルマは自分を使ってバーニアンかどうかの確認もしようとしているのかもしれない。命を狙われれば仮説は確実となり、違えば警戒心は解けないが異地での活動ができる。


 奇襲が有力なのは昨日の件で分かったが、最初から警戒していれば空を飛べるリーアンならば助かる確率はあがるはずだ。


「通話はどうする? もし相手が上手なら通信傍受をしてるかもしれない」


 映画ではハッキングを仕掛けて通話をオンにして聞くことがある。現実にどこまでできるか分からないが、秘密を知る人間が敵側に知られているのなら警戒するしかない。


「無暗に敵を大きくするのは避けるべきですけど、正体が分からないので過剰なくらいで行くしかないですね。けど、バーニアンの俗称が利用できます」


「どういうこと?」


「正規捜査機関でもテロ組織をバーニアンと呼称してバンバン通信を打ってもらうんです。そうすれば敵はどれを追えばいいのか分からなくなります」



「なるほど。木を隠すなら森の中か」


 いくら通信を傍受していたとしても、無数に共通用語を流されてはどの通信を拾えばいいのか分からなくなる。


「もちろんさらに相手がより上手なのかもしれませんが、さすがに裏の裏の裏まで行くとキリがありません。これ以上だと現場が混乱しますのでここまでにしましょう。少なくともある程度の安全は確保できます」


「ではそれで行こう」


 話がようやくまとまり、静寂が病室に訪れる。


「……エルマ、君の意見として聞きたいんだけど、どうやって式典会場をあの規模で爆発させられたのか見当がつく?」


「いえ。私の知る限りでもあれだけの爆発をする通常兵器はありません。エネルギー量で言えばバスタトリア砲ですけど、あれは純粋な物理エネルギーなので爆炎は生まれません」



「日本でも出せると言えば核兵器だけど、放射線は観測していないから違う。かと言って誰にも気づかれずに台座一杯に爆薬を仕込むなんてまず無理だ」


「映画なら色々とありますけどね」


「反物質なら数グラムで核兵器を上回るエネルギーを出すとは聞いてるけど、地球時代でも出来てないからなぁ」


 結局のところ、どうやって爆破したのか分からないと言うことだ。


 しかし、実際に起こしているため何らかの手段が実在していることになる。


 それを調べるのは正規、非正規の捜査機関だ。



「我が軍でもバスタトリア砲のシステムを別に使えないか研究はしていますが、軍艦クラスのハードが必要なので実用的ではないんです」


 仮に爆弾に出来ても百五十メートルにもなれば兵器としては不向きだ。


 バスタトリア砲にはもう数段階拡張性があるとはいえ、小型化出来るかは分からない。


 だが、秒速三百キロから三千キロにまで物質を加速できるシステム。エネルギー量で言えば核エネルギーをはるかに上回るから、反物質並みの破壊力を生み出せて不思議ではない。


 もしかしたら派生システムのがあるのだろうか。


「それじゃそろそろ帰るよ」


「分かりました。今後はこうして会うことは出来なくなりますね。次に会う時は」


「エルマ、その先は言わないこと」


 完全なる死亡フラグを立てる前に羽熊はエルマの言葉を遮った。


 言えば二度と会えなくなる。



「そうでしたね。主治医も明日には退院していいとのことなので、一度イルフォルンへと行きます。まずは最初の難所です」


 無事にイルフォルンまで良ければ、一応仮説は仮説のまま行ける。


「ケータイはラッサロンでなんとかして、あとは現金支払いで記録を残さないようにして行きます。もし世界最高レベルのハッカーが敵側にいても、アナログだったら手は出せませんから」


 地球でも犯罪者が記録に残さないようにカードは一切使わずに活動をする。監視カメラが鬼門だが、帽子やメガネなどで隠せば誤魔化せられるかもしれない。


 ただ、日本の警察はそれでも防犯カメラを繋いで文字通り地の果てまで追いかけるから決して安心はできない。敵側にそこまでの能力がないことを願うだけだ。


「そろそろ行くよ。妻に顔を出したいから」


「わかりました。些細な事でもいいので連絡は密で」


「ええ」


 最後に、煙は収まっても救助活動が続く爆破現場に二人そろって一分間の黙とうを捧げ、羽熊は病室を後にした。



      *



 さすがに国際的なテロが起きた場合、その情報共有は難儀する。


 テロが一ヶ国だけなら当事国の捜査機関に委ねられるが、今回は十六ヶ国で起きてしまった。


 それは捜査機関が十六も存在することになる。


 当然、表向きは情報共有をすると謳っても、外交カードとして使えることから確信的な情報は隠そうとしてしまう。これは国家の性質上仕方ないと言え、客観的に言えばこれ以上ないくだらないプライドとも言えた。


 それでも国家単位の組織が乱立するとこうした問題が浮上する。


 さらに国際組織であるアルタランも捜査機関を立ち上げたため、秩序は大きく乱れた。


 理想を言えばアルタランを頂点に各国が仕入れた情報を申告。アルタランが纏めて再分配すれば効率的な捜査が出来るのだが、情報が何より宝のこの時代。やはり確信的な情報は言わないため足並みが揃うことはないだろう。


 当事国である日本もまた同じだ。



「確かにそれは……聞くべきではない情報ですね」



 若井総理は後悔を表現するように、額に手を当てて呟いた。


 時間はテロ発生から三日目。場所は官邸首相の、誰も使っていない相談室だ。


 決して公に出してはならない話をするのに使われる部屋で、電波妨害に防音設備も完備されている公にもされていない。


 ここでなら何を話そうと、部屋にいる者だけにしか聞こえないため、羽熊は若井総理の判断を聞いた上でバーニアンについてのことを話した。


 羽熊は少なくとも話すだろうとは予見していた。指導者が秘密を知らずして指示を出すことは出来ないし、人間として総じて話してはならない秘密という前振りをされて、聞きたくないと返答はまずしないからだ。


 羽熊自身、同じ前振りをされて聞かないと返事はしない。


 故に話すと、案の定若井総理は頭を抱えたのだった。



「ですので、この話は私と総理の間だけにしてください。日本の調査本部でも共有はせず、通常の手順での捜査をお願いしたいのです」


「これが漏れれば世界規模での日本人の拉致被害が増える。または完全隔離と六年前の再来になってしまう」


 若井総理は羽熊の声が聞こえないのか、日本にとって最悪のことを考える。


「羽熊博士、そのコードネームバーニアンは間違いないんですね? それでウィスラー元大統領がそうだったことも?」


「事実です。そして被害者がその秘密を知っている人と一致しているので、結晶フォロン独占よりバーニアンの方を私とエルマ大使は疑っています」


「だから話しを聞けば私の命も狙われると言ったわけですか」


「ただ、私がまだ生きていることを考えると日本国内にいる限りは無事ではないかと。細工をしようにもリーアンは国内には入れないので」



 あくまで気休めだ。式典会場を爆破した手段が分からない限り安心はできない。


 事実、羽熊は昨夜と一昨日と熟睡できていなかった。数時間おきに目が覚めてしまい、鏡を見てみると目の下に隈が出来てしまっている。


 それは史上最年少で総理の席に座る若井もまた同じだ。むしろ羽熊より悪い。



「総理、くれぐれも捜査本部にこのことは話さないでください。いえ、誰一人でも話さないで」


「安心してください。月並みですが死んでもこのことは洩らしません」


「洩らせば世界中が日本人、いえ、地球人を攫いに来ます」



 地球人とリーアンのハーフは例外なくIQの高い子供が生まれる。その子供に高度な教育をすれば、より先進的な技術や公式、概念が生まれる。それだけでなく肉体的にも超人と呼べるまでに優れるから、特殊兵士としてでも利用できる。


 国家はこうした部分には先見の明は光らせない。後先考えずに今を考えてするから間違いなく狙うだろう。


 地球でも限りある資源を求めて武力にしろ経済にしろ戦争を続けているのだ。人材目的での戦争は必ず起こす。


 だから六年前、この情報は闇に葬ることにしたのだ。



「気になるのはテロ組織がどうしてバーニアンの存在を知っているかですね」


「それはエルマ大使が結成する捜査隊に任せるしかありません。そのためにもバーニアンと言う言葉をテロ組織の仮称として世界中と共有してほしいんです」


「……なるほど、そうすれば裏で動いても犯人は真偽が分からなくなるか」


「それらがどこまで有効なのか分かりません。もしかしたらまったく無意味で、純粋にフォロン独占によるテロで終わるかもしれません。何もかも分からないからこそ、成果が出るまでは全方位で警戒が必要なんです」


「私もそう思います。これは我が国だけでなく世界中で共有させましょう。最低でもイルリハランと歩調を合わせられれば、それだけ相手をかく乱できます」



 真相を知っているからこそ歩調を合わせられても、知らなければ押し付けになる。果たしてどれだけの国々が共有してくれるか分からないが、そこは外交手腕に委ねるほかない。


 少なくとも最大の被害国である日イが同時にバーニアンと呼称すれば、他国も乗っかる可能性はある。



「……となれば博士は向こう側に行くべきですかね……」


「いえ、そこはエルマに止められました。東京も距離的に安心は出来ませんけど、接続地域よりはまだ安全ということで」


「なるほど、指定生存者か。それだと博士は正規非正規それぞれの捜査を同時に見ることになりますが大丈夫ですか?」


「安全を提供してもらって仕事まで怠けることは出来ませんよ。それに私だけ別行動をとるとまた敵側に悟られそうですし。表向きは正規捜査本部に努めて、裏で非正規を支援します」


「ではそれで行きましょう」



 こうして秘密会談は終わる。こうした話が出来るのも、友人関係であるがためだ。もし佐々木元総理の意を汲める人や、考えを知っている人以外であれば博打に近い秘密の漏えいは出来なかっただろう。



「博士、今は非公式の場だからこそいいますが。日本政府として民間人であるあなたに重荷を背負わせていること、大変申し訳なく思います」


 総理臨時代理として、若井は羽熊に面と向かって謝を下げた。


「この秘密の発端は私なので仕方ありませんよ。むしろ気づかなければ今頃日本は隔離されて、輸入を盾にフォロン採掘を強要されていたでしょうし」


 結果的に今とあまり変わらないが、自由の度合いでは雲泥の差がある。


 日本の独立を維持するための重荷と考えれば、本音を言えば嫌でも建前で大丈夫ともまだ言えた。


 ここで建前でも辛いとなれば末期だろう。



「ただ、これは意見として聞いてもらいたいんですが、多分この秘密は必ず洩れます。いくら日本とイルリハランがそれぞれ厳粛に守っても、そもそもテロ組織が把握しているかもしれないんです。リークするタイミングは向こうが掌握している以上、いつ洩れるかわかりません。なので最悪の時の覚悟は持つべきかと」


 こればかりは羽熊は責任は持てない。意見こそ言えても、責任と決断は総理がしなければならないのだ。


「総理なんてなるもんじゃないですね」


「建前と本音を完璧に使い分けなきゃ務まらない仕事ですからね。今のは友人として聞いときます」


「それでは羽熊博士、特別捜査本部のほうはお願いします」


「分かりました」



 こうして日本側の『ユーストル・世界同時多発テロ特別捜査本部』の下準備を終え、本格的に始動することとなった。


 共有すればよくも、決して公に出来ない情報を世界に隠しながら。

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