第2話 洞窟と海底神殿
海底を見渡す私たち。
7人がかりで探し物をした結果、まおーちゃんが何かを見つけたらしい。
まおーちゃんはルリの袖を引っ張る。
「……どうしたの……?」
「あそこ」
「……あそこに、何か、あったの……?」
「どーくつ」
ちっちゃな指がさした先には、たしかに洞窟の入り口が。
岩の中へと続く洞窟はいかにも怪しく、それでいて私たちをこの先に誘っているかのよう。
「……やったね……まおーちゃん、いい子いい子……」
ルリに褒められたまおーちゃんは、にんまり笑っている。
他のみんなもまおーちゃんの発見を褒めてあげた。
「さすがです! まおーちゃんはお利口さんですね!」
「すご〜い! これこそ、魔王様パワーだ〜!」
「フフフ、助かったわ。私からも、いい子いい子」
みんなに褒められて、まおーちゃんはツノを触りながら恥ずかしそう。
でも満更でもないみたいで、にんまり笑顔は崩さない。
この機に乗じて、いまだまおーちゃんに懐かれていない私とルフナも一歩前に出た。
「す、すごいねまおーちゃん!」
「ああ、さすがは『ヤミノ国』を統べる魔王だ!」
なるべく怖がらせないよう、必死の笑顔でそう言う私とルフナ。
けれども、まおーちゃんはそそくさとルリの背中に隠れちゃった。
私とルフナは、お互いの背中を合わせ、その場に崩れ落ちる。
「高感度メーターが上がる気配がないよ……」
「第一印象が最悪だと、もうどうしようもないというのか……!」
ちょっとだけ傷ついた私たち。
まあ、ルリの背中に隠れるまおーちゃんもかわいいから、それはそれでいいんだけどね。
なんにせよ、進む道は見つけたんだ。
自宅はさっそく、まおーちゃんが見つけた洞窟に入る。
「広い洞窟ね」
「洞窟というか、ほとんどトンネルみたいだよ」
相も変わらずスキルのおかげで暗さは感じない。
おかげで、洞窟の壁が妙に整えられているのが気になった。
まるで誰かが作ったトンネルのよう。
潮の流れに惑わされることもなく、自宅は悠々と洞窟の奥へ。
しばらく進むと、開けた景色が遠くに見えてきた。
「……何か、この先に、ある……」
「あれは、神殿か?」
開けた景色の中に佇むのは、巨大な人工物だった。
四角い石を積み上げて作られた、三角形の巨大建造物を見て、スミカさんは目を丸くする。
「こんな海の底に立派な建物があるなんて、驚きだわ!」
想定外の景色に、私も開いた口が塞がらない。
念のためメモ帳に目を通すと、どうやらあの三角形の建造物がバツ印の場所——海底神殿らしい。
海底に佇むピラミッドのような神殿だなんて、怪しさ抜群。
ここで、ミィアとシェフィーが意外な反応を示した。
「あれれ? この神殿、どっかで見たことある気がするよ〜?」
「わたしもです。でもどこで——」
まさかまさかのセリフ。
私たちが次の言葉を待っていると、シェフィーは手を叩いて叫んだ。
「この神殿、まさか!?」
明らかに何かを思い出した表情。
好奇心に駆り立てられた私は、すぐにシェフィーに尋ねた。
「どうしたの? シェフィー、この神殿を知ってるの?」
「おそらくですが、この神殿は『三角な神殿』だと思います!」
「おお〜! それだ〜!」
シェフィーの言葉にミィアも何かを思い出したみたい。
どうしよう、あんなに怪しい神殿を知っている人が2人もいるなんて、想定外すぎるよ。
唖然とした私のことは気にせず、シェフィーは話を続けた。
「古代の記録にあるんです。2000年ほど前、今のテイトの前身である『ムカシノテイト』、そこにあった『三角な神殿』が、とある大魔導師のイタズラでどこかに消えてしまったという伝承が。その三角な神殿が、あの神殿なんだと思います」
さらにミィアが無邪気な口調で続ける。
「たしかたしか! 大魔導師は当時の女帝さんと、どっちが最後のケーキを食べるかでケンカして、腹いせに三角な神殿を転移魔法で飛ばしたんだよね! でも、どこに飛ばしたのか分からなくなっちゃって、それ以来、三角な神殿は行方不明になっちゃったの〜!」
「何その深刻すぎる子供のケンカ」
全体的にロマンあふれる話なのに、理由がショボすぎるよ。
でもまあ、シェフィーとミィアが神殿の正体を明かしてくれたのは助かる。
何の情報もないダンジョンと、事前情報のあるダンジョンなら、後者の方が攻略しやすいからね。
2人の話を聞いたルフナも、おかげで納得した様子。
「あの神殿が記録にある三角な神殿なら、テイトに繋がる転移魔法陣があるのも当然だな」
そうだった、そんな話があった。
たしかその転移魔法陣を、まおーちゃんを追放した魔女メトフィアの部下が狙ってるんだったっけ。
これは急いだ方がいい、と私が思っていると、まおーちゃんが自宅に来てはじめて叫んだ。
「イショーおねえちゃん!」
希望の光を見つけたように立ち上がるまおーちゃん。
すぐにルリが尋ねる。
「……イショーちゃん、神殿に、いるの……?」
「うん、かんじるの! イショーおねえちゃん、しんでんでがんばってる!」
「……そっか……じゃあ助けに、行こう……!」
ルリとまおーちゃんは、心配そうな、でも嬉しそうな表情をしていた。
直後、スミカさんが勢いよく立ち上がる。
そして、いつもの優しい笑みを浮かべ、三角な神殿に向けて指をさし、声を張り上げた。
「急ぐわよ! イショーちゃんのために!」
自宅は急加速し、水を切りながら、三角な神殿へと突っ込んでいく。
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