ハンナの魔法陣修行 ~天然美少女の魔法がなぜかいつも暴走する件~

作者 譜田 明人

たとえ離れても、いつか必ず巡り合える……。

  • ★★★ Excellent!!!

近未来。VR世界から異世界へと転移されてしまったアキとヨシミーとハンナ。もとの世界へ戻るべく異世界を歩き進めるうちに、世界の構造が明らかになってきて。でも……あれ……? ハンナとアキは、『どこかが』違うような?

これは、人が人を好きになっていく過程を丁寧に描いた物語です。
主人格のアキとヨシミーとハンナ、そして途中参加のジェイは、まずは「一人の人間」として登場します。もちろん、相互の人に対しては「仲間」であったり、時には「協力者」の関係であるように振る舞います。いきなり「好き好き!」みたいな恋愛レボリューションはないわけです。
だけどこの四人の間で、すこしずつ関係が動いていきます。この微妙な進展……丁寧さが本当にうまい。筆者の力によるものだと思います。それはなぜかと考えたのですが、異世界での生活を丁寧に描かれたからではないでしょうか。冒険の部分は冒険を、謎解きの部分は謎解きを、そしてもちろんアキたちには一日の冒険を終えた後の時間というものがあるわけで、その生活の部分も丁寧に描ききった結果、異世界にあったとしても痛烈なリアルさを表現できたのではないかと思います。読者はきっと、「あ、異世界に行ったらこういう生活をするだろうな」「こんなドキドキがあるかもしれない」と感じながら読み進めることができるでしょう。筆者は異世界での「時間」をきっちりイメージしながら書かれています。あっという間にシーンがすっとんだり、現代っぽさの抜けない行程が続いたりということはありません。長々しく感じさせるどころか、小気味よいバランスで冒険と謎解きと生活の三要素を展開させてくれます。

なお、ヨシミーがめちゃくちゃかわいいです。
先ほどこの小説は「人が人を好きになっていく物語」と申しましたが、心の動きに関して一番かわいらしいのはヨシミーというヒロインでした。冒頭ではどこか冷静で飄々としている彼女。だけど読み進めるうちに彼女の魅力にとりつかれていきます。特に、とある人へ寄せる想いについてはものすごく敏感に描かれていたと思います。このヨシミーのかわいらしさと心の動きが本作最大の見どころだったと(個人的に)感じます。

アキたち四人はゴールを目指します。
そのゴールは、誰もが営々と暮らしていける世界ではないかもしれません。
だけどこの小説を読み終えた時、あなたは複数の意味でこう思うでしょう。
たとえ離れても、いつか必ず巡り合えると。

人が人を想う、素敵な小説でした。

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