英雄と悪魔の戦い

岳連拝師

第1話『その英雄と出会ったのは、冬の季節だった』

 角を生やし、ドラゴンの翼が生え、尻尾を生やした少年少女がいた。彼らの種族は竜人、滅びたと言われているプロトリア王国の生き残りである。

 そんな彼らがどうしてか、ライヒェン国のロルグの所にいた。流れ流れて、群れと逸れ、親からも逸れ、二人で生きていくことしかできなかったのだ。

 人々からは奇異の目で見られるから、できるだけ、フードを被って、尻尾も隠していた。赤い竜のレッドと、白い竜のホワイトは、公園で寝泊まりをしている。誰かが近づいてきても、レッドが追い返している。

 レッドは十五歳くらいで、ホワイトは四歳くらいだった。それなのに見た目は成人した男性と、少女と女性の中間のまだ熟していない少女みたいに見えただろう。

「じゃあ、お兄ちゃん今日もまた、ご飯とってくるから待っててくれよ?」

「うん、わかった!」

 本当なら肉とかを食べさせてあげたい。でも、自分も空腹なのを堪えて、妹に全てパンをあげているため、痩せ細っている。

 いつも食事はパンのみ、いつレッドとホワイトは栄養失調とかで死ぬのではないかと思った。

 雪が積もり始めた、竜人にとっては辛い季節だが、妹の為に頑張って、パンを奪いに行かなければ、飢え死にしてしまう。自分は死んでもいい、だが、妹が飢え死にするのは嫌だ。

 妹だけが、今の唯一の肉親なんだ。その時、目の前にシルクハットを被り、山羊の角を生やし、黒い髪の青年が立っていた。服は燕尾服を着ている。

 直感的に悪魔だと思ったレッドは、すぐ身構えるが、目の前の男は嘲笑うだけでこう言った。

「吾輩の名前はバフォメットだ。貴様ら兄弟を救ってやってもいいぞ」

 偉そうな物言いだが、救ってくれるとは一体どういう意味なのか理解ができなかった。

「理解できないと言いたげだな、いいだろう説明してやろう。吾輩は何かを対価に貴様らを救ってやろうと言っているのだ」

「じゃあ! 金をくれ!!」

「いいだろう」

 すると一生困らない分の金が手に入った。レッドが喜んでいると、悪魔はにやりと笑って「契約成立」というと消え去った。礼を言おうと思ったのだが、いなくなったのだから、しかたない。

 沢山の金を持って、沢山食べ物買って、公園に戻ると、ホワイトの姿がない。食べ物を抱えながら隠れているかもしれないと思い、辺りを見渡すが、匂いはしないし、気配もしない。

 一体どういうことだと思っていると、タートルネックに、ベストを身に纏った人が、異常に動揺しているレッドを見て心配したのか、聞いてきた

「どうかしたのか」

「実は、妹の姿が見えなくて」

「……お前、その手の甲の傷」

「え?」

 手の甲を見ると、悪魔と契約した証の魔法陣が浮かんでいた。それがどうかしたのかと思って、見てみると、目の前の男性は言った。

「とりあえず、お前の妹はもう帰ってこないと考えた方がいい」

「なんでだ!?」

「悪魔と契約する前、説明があったと思うが、代償はなにを払った?」

「あ……」

 払ってない、何も払っていないのだ、つまり、代償は妹だった? そう考えると絶望を覚えた。膝をついて、絶望していると、男は言った。

 白い髪を長くし、眉は細め、端正な顔立ちをしている。

「俺の名前はカルディナだ。カルナでいい、悪魔を潰しに行くぞ」

「どうやって、居場所なんか分からないのに」

 カルディナ……、いや、カルナは、鏡を取り出した、そして問いかけている。

「この竜人の妹を探している。場所を教えろ、鏡の魔女」

「えー、いいけどさー、また外に出してよぉ?」

 魔女というか、おねぇ系男子の人が鏡の中から現れた。そして、魔女は占術し始めた。

「ふむふむ、東の方向の山にその悪魔はいるわ」

「わかった」

「じゃあ、まったねー」

 鏡の中の魔女は消えていった。カルナは、レッドを連れて、急いで東の方向の山に向かった。

 カルナは馬に乗って向かい、レッドは翼で飛んで向かった。


 バフォメットは、ホワイトを連れて一番偉い人の前で跪いていった。

「メフィス様、是非、この子も悪魔に」

「ふむよかろう」

 ホワイトは訳が分からないのか首を傾げていた。メフィスが手を伸ばし頭に触れようとした瞬間、熱い痛みが走る。炎の矢が飛んできたのだ。ただの炎の矢じゃない。矢自体に炎が巻き付くように、だ。

「チッ、英雄が来たか」

「返してもらおう。その娘を」

「メフィス様、この子を連れて、お逃げください」

「ああ」

「兄様」

「ホワイト!」

 ホワイトはメフィスに連れられて、消えていった。レッドは膝をついて絶望をする。その光景を見て、怒りを露わにするカルナ、不味いと思ったバフォメットは、逃げようとするが、時すでに遅し。

「『第二形態 死の炎!』」

 矢と弓を引いて放った瞬間、建物ごと燃やしそうな凄い炎が纏い、バフォメット刺さる直前、炎の死神が見えた。

 最悪の事態に陥ったと、理解するのは、いつも手遅れになってからだった。

 その炎を飲み込むかのように、スイレンの歌声が響き渡った、濁流が流れてきて、炎を打ち消す。

「兄様、大丈夫ですか」

「ああ、ありがとうスイレン」

「行きますよ!」

「ああ!」

「二対一か、分が悪い……」

 自身の唇を撫で、唇を爪で切って、弓に塗り付ける。悪魔は簡単には死なないということは知っているので、自身の血を使うことによって、全て変わることを知っていた。

 レッドが言う。

「俺にも戦わせてください」

 カルナは驚いた表情をしたが、すぐに普通の表情戻って、下がっていろと命令した。

 スイレンは手を動かして、歌を歌った。『歌の形態 死の子守唄』、うつらうつらとしながら、矢を放つカルナに、バフォメットはナイフを取り出した。

「『刃の形態 波形』」

 そう言って切り落とし、カルナの体にも傷をつけた。カルナは、この眠さと、この不利な状況にいることに、苛立ちを覚えながら、レッドを連れて馬にどこかへといった。

「追いかけませんの?」

「スイレンが心配だ、愛しの妹よ」

「まあ、兄様ったら」

 頬を撫でて、額にキスをするバフォメット、スイレンはそれを受け入れるが凄くくすぐったそうに微笑んだ。


 これからの物語は悪魔と英雄たちの戦いの記録である。

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英雄と悪魔の戦い 岳連拝師 @huugetudou

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