第14話

 そして、先生は黙って私の体を抱きしめてくれた。

 私は、しあわせだった。

 ああ、人って暖かいんだ。

 そう思った。


 だけど、この行為があとで後悔することになる。


 先生は、再び私をいじめていた人たちのたまり場に向かった。


「まだ、彼女をイジメているんだね」


「はぁ?

 教師をクビになった人に関係あるんですかー?」


「教師じゃないから君たちを殴ってもただの喧嘩で終わるね」


 先生が、そう言って男子生徒に詰め寄る。


「……じゃ、この画像はどう説明します?」


 そこには、先程先生が私を抱きしめてくれたときの写真が載っていた。


「援交女子高生にそれを買った元教師!

 これ、週刊誌に出したらいくらで売れるかな―?」


 女子生徒が嬉しそうにそう言ってケラケラと笑う。


「僕のことは好きにしていいよ。

 でも、彼女のことは――」


 先生が、そこまでいいかけたとき男子生徒が言葉を待たずに顔に向かって拳をぶつけた。


「俺、正義の味方とか嫌いなんだよね。

 力も実力もないやつがそれをするのがもっと腹立つよ」


 そして、先生は殴られ続け……

 そして、命を落とした。


 先生は河川敷で変死体として発見された。

 私には、すぐにアイツらが犯人だとわかった。

 私は、勇気を絞ってあの人たちに抗議しにむかった。


「どうして、先生を殺したんですか?」


 しかし、この人たちはとぼける。


「はー?

 俺たち犯人じゃないんですけどー?

 ってか、ペットが生意気に意見してくるんじゃねぇよ」


 男子生徒は、私のブラウスを引き裂いた。


 怖い。

 とても怖い。

 だけど先生を殺したことは許せない。


 私は、その男子生徒の頬を叩いた。


「なにすんだよ!」


 男子生徒は、私の体を一気に押し倒した。

 そして、わらわらと集まる男子生徒たち。

 私は、この日もレイプされた。


 つらかった。

 苦しかった。


 でも、生きなくちゃ。


 それが、先生との約束だから……


 そして、数日後。

 私は産婦人科に向かった。

 妊娠していたら堕ろそう。

 そう思った。


 そして、医師に告げられた言葉は……


「妊娠している……

 けどおなかの赤ちゃんは、もう亡くなっているわ」


 その言葉を聴いたとき私はぞっとした。

 ネットでは私と先生の写真がアップされ週刊誌やワイドショーで取り上げられている。

 私の顔には、モザイクはある。

 だけど……

 先生の顔には、モザイクはない。


「……私、どうしたらいいですか?」


「貴方まだ女子高生よね?

 貴方のお父さんやお母さん、向こうの親御さんはこのこと知っているの?」


 私の両親は私には無関心。

 そして、父親なんて誰かわからない。


 病院から出た私は、公園でひとり泣いた。

 いっぱいないた。

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