第141話魔族討伐

 魔族達には大きな誤算だった。

 今迄のベン大将軍やアレクサンダー王子の行動を参考に、兄弟を人質に攻撃すれば、相手が手出しできなくなると考えていたのだ。

 だがそれに反して、アレクサンダー王子は何の躊躇もせずに兄弟を焼き殺した。

 魔族の常識でも考えられないくらいの高温の火炎魔法で、それこそ灰も残さず焼き殺した。

 その為、例え殺されてもアンデットにして使うと言う方法が取れなくなった。

 それどころか、憑依していた魔族の中には、王子達から離脱出来ずに焼き殺された者までいた。

「魔族の気配を捕らえたぞ」

「「「はい」」」

「業火圧縮連弾で皆殺しにする」

「「「はい」」」

 アレクサンダー王子は、憑依していた魔族に逃げられた訳ではなかった。

 逃げるのを追いかけて、魔族の隠れ家を見つけ出すために、わざと逃がしたのだった。

 そしてその場所に辿り着こうと、 全速力で追いかけた。

 その速さは、パトリック達を置き去りにするほどのモノだった。

「殿下。御待ち下さい。殿下」

「周りを警戒して付いてこい」

 アレクサンダー王子は、わざとパトリック達を置き去りにした。

 このまま付き合わせたら、王太子殿下や国王陛下の弑逆に立ち会わせることになる。

 そんな事になれば、パトリック達は末代まで逆臣の汚名を着ることになる。

 魔族に憑依されているとは言え、先祖代々仕えた大恩ある主君なのだ。

 それに、憑依されていたと証言するのは、簒奪者と罵られるアレクサンダー王子なのだ。

 アレクサンダー王子の心には、将来陰に日向に罵られるであろう言葉が浮かんでいるのだ。

 そんな言葉を、パトリック達が子々孫々投げつけられるなど耐えられなかった。

「俺が汚名を着る分は、キッチリ報復させてもらうぞ」

「人間の分際で、魔族に勝てると思っているのか」

「だったら、何故尻に帆掛けて逃げたのだ。臆病魔族が」

「おのれ」

 僅かに残っていた体力自慢の魔族が、鋼鉄さえも切り裂く、魔力を宿した長爪を振るって襲い掛かってきた。

 僅か三魔の魔族ではあったが、三位一体の攻撃は鋭く、ドラゴンダンジョン騎士であろうと、一撃で斬り裂かれる鋭さだった。

「遅い」

「「「ジュ」」」

 だがそんな圧倒的な攻撃も、一瞬で終わってしまった。

 魔族がどんなに変幻自在に動いた心算でも、業火圧縮連弾の攻撃をかわす事など出来なかった。

 業火圧縮連弾に触れた途端、蒸発するように燃え尽きてしまったのだ。

 残った憑依型魔族と傀儡子型魔族は、慌てふためいて逃げ出した。

 それをアレクサンダー王子は見逃した。

 まだ国王陛下と王太子殿下の居所が分からなかったからだ。

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