第104話暗雲

「陛下、アンドルーと連絡が取れません」

「分かっている」

「直ぐに援軍を送ってやって下さい」

「残念だが、今の我らにはそのような兵力はない」

「我が子を御見捨てになると申されるのですか」

「エイダ。御前は自分の子は大切にするが、他の王子には、随分と危険な目に所に行かせていたではないか」

「アレクサンダー王子の事を申されておられるのですか」

「そうだ。だがアレクだけではなく、他の王子に対しても、影から手を打っていたのは知っておるぞ」

「それは、王位をつつがなく継承させ、王国に波風を立てないためでございます」

「王国の為、国民の為にやってきた事だと申すのだな」

「その通りでございます」

「なら今この状況で、騎士団を王都から出せない事は、理解できているであろう」

「そんな。アンドルーに何かあれば、王継承で内乱を勃発させてしまうかもしれません。それを防ぐためにも、どうか援軍を御送りください」

「先にベン大将軍が輸送部隊の派遣を願ったときに、そなたは王都の護りを疎かには出来ないと、猛反対したではないか」

「それは・・・・・ベン大将軍程の勇士が、四個騎士団も率いていて、それ以上の軍勢が必要とは思われなかったからです」

「嘘を申すな」

「嘘ではございません」

「そのベン大将軍と四個騎士団が、魔族の襲撃で皆殺しになりかけたではないか」

「それは・・・・・結局、全滅させたではありませんか」

「それはアレクサンダーが援軍に駆け付けたからだ。今はそのアレクも、遠いネッツェ王国におる」

「でも、ベン大将軍達は、何事もなく、国境を守っているのではありませんか」

「だが、魔族の襲撃があれば、全軍が壊滅していたであろうし、多くの国民が殺されていたであろう」

「それは・・・・・結局何事もなかったではありませんか」

「その通りだ。何事もなく、ベン達は国境を守り、荒廃した国土を再建させてくれている。情け容赦のない判断でも、王都を優先する事は間違いではない。それと同じように、王都を守るためならば、アンドルーに援軍を送れないこともある」

「そんな、アンドルーとベン達を同じに考えられるのですか」

「母上、もうお止めください」

「何故止めるの、エドワード。アンドルーの事が心配ではないの」

「今出征している、全ての将兵の母親が、母上と同じように我が子の事を心配しております」

「それは‥‥でも、アンドルーは第二王子で」

「母上、私の母親を軽蔑させないでください」

「私を、軽蔑すると言うのですか」

「ドラゴンダンジョンの勇者と言われた母上はどこに行かれたのですか」

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