第102話アンドルー第二王子

「アンドルー殿下、魔族の攻撃でございます」

 イーゼム国の魔境に拠点を定めた、アンドルー王子とドラゴンダンジョン騎士団であったが、何時の間にか本国との連絡を絶たれていた。

 アンドルー王子とドラゴンダンジョン騎士団がその事に気が付いた時、虎視眈々と機会をうかがっていた魔族が、一気呵成に襲い掛かってきたのだ。

 アンドルー王子とドラゴンダンジョン騎士団は油断していた。

 いや、自分達が最強だと過信していた。

 敵も過信するように誘導していた。

 ドラゴンダンジョン騎士団には全く歯が立たない、人間の軍勢に攻撃させて、簡単に全滅させた。

 敵にとっては、人間等消耗品でしかないのだ。

 次の魔境に誘導したが、その魔境でも、簡単に狩れる弱い魔獣や魔蟲しかいなかった。

 ところが、魔族の襲撃に併せて、強力な魔獣と魔蟲が大量に出現したのだ。

 魔族が強力な魔獣と魔蟲を隔離していたのだ。

「殿下、魔境に御逃げ下さい」

「敵に背中を見せろと言うのか」

「死んだ者は何も掴めませんぞ」

「生きて卑怯者の汚名を着るくらいなら、名誉を守るために死ぬ」

「王妃殿下が哀しまれますぞ」

「それは」

「我らが魔境を切り開きます。後に続いて下さい」

「うぎゃぁ」

「マクシミリアン隊もこれ以上持ちこたえられませんぞ」

「分かった」

 ドラゴンダンジョン騎士団は、命懸けでアンドルー王子を守ろうとした。

 魔境の中に紛れ込み、魔族の目を眩まそうとしたのだ。

 魔境の中が、自分達が確認したいた時と、全く様相が変わっている事に気が付かなかった。

 普段なら敏感に感じたのかもしれないが、予想もしていなかった魔族の襲撃に、気が動転してしまっていた。

 先頭を走るのは、ドラゴンダンジョン騎士団でも、魔境探査の時に先方を務める部隊の生き残りだ。

 魔族の襲撃を防いでいるのは、残った全ての者が、襲撃時にいた場所で個別に行っていた。

 襲撃時に奇襲を受けなかった者だけが、三々五々集結し、臨機応変に部隊を偏していた。

 こんな時でも、直ぐにアンドルー王子の側に駆け付けた、優秀な者が集まって、突破部隊を編成したのだ。

 アンドルー王子の近習が、最側近として盾代わりとなり、魔境の中に入っていった。

 最後まで魔族を防いでいるのは、魔境探査の時に殿を務める部隊の生き残りと、とっさに殿を選んだ忠義者だ。

 魔族に奇襲を許した上に、身体能力でも大きな差がある。

 だがそれでも、ドラゴン魔境で戦い続けた歴戦の猛者だ。

 守備に徹したら、それなりの時間稼ぎくらいは出来る。

 連携に慣れた何時もの部隊だったら、例え魔族が相手だったとしても、もっと力を発揮して戦えたのに、今は生き残った者達が組む臨時部隊だ。

 油断と増長により、まんまと魔族の罠に嵌ってしまった。

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