第90話再会

「村長、狩りは順調なのか」

「それが若殿様、魔獣の密度が濃く、レベルも高すぎて、思うように狩ることが出来ません」

「全く狩れないと言うわけではないのだな」

「はい。何とか飢えることがない程度には狩れているのですが、御代官様が望まれるような質や量は、とても狩ることが出来ません」

「では余が手伝ってやろう」

「有難い事ではございますが、具体的にどうしてくださるのでしょうか」

「余が強敵を奥地に引っ張って行くから、残った銅級や鉄級を狩ればいい」

「それでは数は狩れますが、質が追い付きません」

「質は余が税として治める分で補えばいい。村長は村人を飢えさせない事を優先しろ」

「そうでございますね。若殿様の仰られる通りでございます」

「では人手を集めてくれ」

「承りました」

「おにいちゃん!」

「おお、マギーか。元気にしていたかい」

「おにいちゃん。おにいちゃん。おにいちゃん。おにいちゃん」

「何を泣いているのかな。おかあさんは元気にしているかい」

「若様、御久し振りでございます。その説は大変世話になりました。受けた御恩の大きさに、御礼の言葉もありません」

「当たり前の事をしただけだ。ギネスが恩に感じる必要などないよ

「いえ。若様に助けて頂いていなければ、私もマギーも、言葉に言い表せないような、汚辱に満ちた悲惨な暮らしを強いられていたとこでしょう。心から感謝しております」

「それでギネスさん、村の狩りは厳しい状態だと聞いたのだが、ちゃんと食べていけているのか」

「確かに厳しい状況ではありますが、若様に助けて頂いたころよりは、食べ物にも恵まれております」

「おにいちゃん。またおにいちゃんといっしょに、おなかいっぱいごはんがたべたい」

「これ、マギー。若様に無理を言ってはいけません」

「だって、おかあさん。うぇ~ん」

「よしよし。御兄ちゃんは狩りに行くから、先に御母さんに御飯を作ってもらいなさい」

「おにいちゃんといっしょじゃないの」

「御兄ちゃんは、沢山美味しいものを狩って来るから、先に食べていなさい」

「さびしい・・・・・いっしょがいい」

「これ、マギー。勝手を言ってはいけません」

「うぇ~ん」

「まぁまぁまぁ、マギーさんはこれで村人に炊き出しを作ってやって下さい」

 余は魔法袋の中から、わずかに残った銅級と鉄級の魔獣と魔蟲を取り出して渡した。

「分かりました。皆喜ぶと思います」

「若殿様、ありがとうございます」

「村長、村に備蓄がないようだから、狩人が集まる前に少し狩って来る」

「申し訳ございません。私に指導力と実力があれば、もう少し余裕があったかもしれないのですが」

「気にするな。皆がやれることを堅実にやるしかなのだ」

「はい、若殿様」

 さて、ボニオン魔境騎士団領の民だけではなく、アゼス魔境周辺の獣人達の為にも、本気で狩りまくるしかないな!

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