第146話 僕は超珍しい漢【ウコンパンプ】(11)

 隣の爺さんは手招きをする。するのだよ。


「こっちへこい~」、


「こっちへ~」、


「ほら~。試食~」、


「食べにこい~。こい~」とね。


 己のお店、天板の上に置いてある。あった。小さく切り。カットされた試食の入っている陶の器を己の掌。他人が傍から凝視をすれば、年齢が直ぐに分る。皺くちゃな掌で掴んだ陶器の器を、遠く離れた場所から、こちら側を興味津々に遠目から見ながら観察しているお客様達へと、『はい』、『はい』、『は~い』と、差し出すのだ。隣の爺さんはね。


 それも、相変わらず、己の皺くちゃ、年齢の重み、年紀を感じる皺の入った掌で、招き猫。と、いうか?



 たぬきの設樂焼が手招きするように、ダブル、セットで、遠く離れたお客様達へと試食の入った陶器の器を差し出し、手招き。


「ほら~。こっち~」、


「こっちにこい~」、


「今直ぐ~」、


「食べにこい~」、


「ほら~、早く~。早く~」と。


 他人ではなく。知人。知り合い。近所の人。友人にでも声をかけるように、急かしながら呼ぶ。呼び込みを何度もおこなう。おこない続ける。



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