第125話 話しは飛ぶが、齢九二歳の昭和の昔話……。(27)

「おじさん?」と。


 隣の販売ブースで『イカン!』、『イカン!』、『どうにもならん』と、相変わらず嘆いている御老体へと声をかける。


「ん? 何だ?」


 家のおじさんが声をかけると、嘆いていた御老体から直ぐに言葉が返ってくる。


 だから家のおじさんは、


「おじさん、いくら大東亜戦争時の戦時下だと言っても。流石に中世の時代ではないのだから。子供が攫われる言うことがあったとしても。大人の女性が攫われると言うことはないのではないか? おじさん?」


 と、相変わらず苦笑をしながら訊ねる、だけではない。


「だからおじさんの話しは、少しばかり大袈裟過ぎるし。いい加減な話しだと儂は思うのだが? 違うか? おじさん?」と。


 家のおじさんは、隣の御老体の話しに対して不満を漏らす。大袈裟過ぎる話だと。いくら自分が昭和の一桁産まれの世代ではないにしても、昼間の陽の高い時間帯に大人の女性を肩に抱えて走り出す。


 そう、連れ逃げ、逃走を計れば大きな声──。


『きゃぁ、あああ~! 助けてぇえええ~! 助けてぇえええ~! 誰かぁあああ~!』と。


 女性は絶叫を放つに違いない。と、いうか? 先ず自身の腕を掴まれ──強引に引っ張られる不快な行為を受けるだけで、女性は声を大に絶叫──。周りに助けを求めると思うから。まずそんな邪な、恐ろしい事は起きないと、隣の御老体へと家のおじさんは、苦笑し、諫めるように告げ、問うのだよ。


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