第45話 おじさんとJK(32)

 それなのに彼が、この商いを三十年近く続けられたのは、この『奥さん』と『お姉さん』の言葉の使い分けでね。


 たまに、色々なテレビ局などが放映をしていることがあるのだが。大阪の奥さま達に『お姉さん~!』と呼んでみて、大阪の女性達が振り返る反応の数の多さを特集していることがあるのだが。


 あれは大阪に限りだけではなくて、どこの都道府県の女性も一緒だと、僕【芋かりんとう】は思うのだよ。


 家の販売業に向かない容姿を持つ、怖顔のおじさんの販売方法を傍から凝視していたらね。


 だって女性と呼ばれる種族の人達は、幼い娘(こ)からお年寄り……。




 それこそ? 百歳前後の女性(ひと)までも、基本『お姉さん』と呼ばれると反応を示すのだ。いくら自身の眉間に皺を寄せて怪訝しい表情をしていても。自身の顔を緩ませ穏やか──。大変に嬉しそうに『もう~。お兄さんは~。おばちゃん相手に……』とか。『お婆ちゃん相手に何を言っているの~』といった感じの台詞を女性達は、取り敢えず不満を漏らすように言葉を漏らし告げてはくる。


 そうくるのだが。大抵皆は?



 というか?



 ほとんどの女性達が自身の顔を緩み、ほころばせながら笑みを浮かべ──嬉しそうにしている。



 ……だけではない。


 ここで、『綺麗なお姉さん』とか、『綺麗なお姉さん達』、『綺麗なお嬢さん』などの『綺麗』の一言を入れると更に効果大で、お姉さん達が怪訝しい表情や不満、不快感を示すことをしないで彼女達は、心地良い反応を示してくれる気がする。


 僕【芋かりんとう】が家の怖顔のおじさんの、販売方法とトークなどを三十年近く凝視していてね、思うのだよ。

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