ちょうかつになるな!その17
終戦前にアメリカが日本の領土でばら撒いた爆弾とビラ、そのうちビラにはいくつか種類がありました。
その中で今見ても興味深いと思えるビラがあります。
それは、「カラーで表示された」お寿司のビラです。
なんでも、アメリカ軍の中にいる日系の人々とあれこれ相談したうえで今の私たちが見ても見目麗しく美味しそうなお寿司が描かれていました。
このチラシの目的は、「戦争が終われば今まで我慢してきた食事をこれからは食べることが出来るようになる、だからこの不毛な戦争は止めよう!」というものでした。
ここでコウメイはある点に注目します。
「もしかしたらいろんな食事を描いたビラもあったかもしれないが、ホットドックとかビフテキとかではなくわざわざ美的感覚に優れたお寿司を準備したのはなぜか?」
皆さんにとってはそんなに不思議ではないと思います。
言うまでもなく、日本人の戦意を喪失させるのに食べ物はメチャクチャ有効である。
そして、魅力的なビラであればその効果は大いに期待できる。ですね。
しかし、コウメイはこうしたうがった見方も出来ると考えていました。
アメリカは自分たちが優れていて、日本が劣っていると考えていたらどうか?
日本人の想いなどに忖度せず彼らの価値観、思考でこの作戦を立てていたらどうだったか?
そうです、爆弾だけ、あるいはハンバーガーや肉やポテトの絵のビラを撒いて自分たちの自尊心を満足させることもあったはず。
でもそれをせず将来の敗者である日本人に合わせた!
これもまた学ぶ点ではないかと彼は仲間たちに問いかけました。
こうした視点で見るといちいち当たり前に聞こえますが、それは冷静で客観的で第三者的視点だからこそ見える見解です。
これに、いままでの民族的差別やいざこざが長い間続くとこうした発想は怒りや憎しみの感情に押し流されてしまいます。
コウメイはそのあたりの思考を仲間たちに理解して欲しいと切に願っていました。
感情のために冷静な判断が出来ないと、後々のことを考えることも、それ以前に自分たちに対峙する人々に対して適切な対応をすることも出来ない場合があることを理解してほしかったのです。
コウメイはこの話の核心、そして秘められた本心を打ち明けます。
それは次のお話で。
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