ひだまりの民の勝利報告?その7

テレスの提案は大胆な物であり、今まで膠着状態だった戦線からある程度の人員を配置転換するというものでした。

いままで、ガチスとデンゲルの圧倒的な数量を前に常に外敵への対応を迫られていた、そのパターンから抜け出すわけですから、おいそれとはいきません。


かといって、テレスの状況分析は正確であると皆が考えていたので無為に提案を退ける理由もありませんでした。

しばし、沈黙が場を支配しました。


そして、数分ともそれ以上とも思える静寂の後に声を発する者が現れました。

それはコウメイ、この集まりの参加者では最も経験があり、信用もある人物です。

よほどひどい内容でない限りは彼のこの後の発言が今後の方針の大きな道しるべになる、参加者たちはそう思いながら聞く体勢を整えました。


コウメイ曰く、「テレスやバグダの活躍のおかげで長年の危機は脱しつつある、この機を逃さず新しい目標を定め、それに見合う人員の配置を考える時が来たのではないか」


彼の一言で方針は定まりました。

ちなみに蛇足となる話ですが、もしこの発言が若手官僚たちの集まる会議でなされていたなら、恐らく消極的な空気と反対の声が起こったかもしれません。


官僚というのは、変化を嫌います。

何か変更するときは大抵悪い数字や結果がでてから、渋々動き始めるというのが定例のパターンでした。


官僚というのは一部の例外を除いて未知の勝負という概念に対してとても弱いものです。


それは官僚の能力が劣っているということでは決してありません。

ただ、公的組織に長く生きるためには、未知の勝負とか未経験の話はしない、あるいはないという前提で物事を考えるように訓練、あるいは洗脳されていくのです。


もちろんコウメイもそのことを良く知っていましたので、若手官僚たちがいないこのタイミングにこの発言をしたのです。


では、なぜコウメイは若手官僚たちとは違う即断即決を促したのか。

そのことに対する他の若手官僚よりもさらに若い6人組とその後見人たちや仲間の反応とは?


それは次回に種明かししましょう。


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