変人たちの最激戦区その10
さて、テレスがデンゲルから逃れひだまりの国に着いたころ、デンゲルの国民感情はほぼデンゲル主義に染まった状態で統一されました。
宰相の考えとしてはデンゲルの国論を統一した後、ガチスに統合されることを目標にしていたのですが、思った以上にデンゲルの民衆が攻撃的で過激なため、その目標をひとまず置いておくことにしました。
代わりに当て馬として登場したのが、かつて戦争で負けてデンゲルが外交的に優位に立つことが出来、国民感情から見ても攻撃するのに格好のターゲットであった「ひだまりの国」でした。
国力で見た場合、ひだまりの国の方がはるかに強く、また軍事的に見ても勝てる相手ではありませんでした。
しかし、宰相は直近で大成功をおさめています。
つまり、司法、行政、メディア、教育にガチス主義とデンゲル主義を持ち込み、ひだまりの国を支配してしまおう。
ついでに憎しみと破壊に満ちた国民の欲望をひだまりの国で発散させるように仕向ければ政権は安泰、そう考え早々に計画、実行することにしました。
少しこの点を補足すると、ガチス派やデンゲル派に親近感を持つひだまりの上級国民はこの宰相が現れる前にも一定数いました。
彼らは小遣い程度の賄賂と女性などの接待によってそうした恩恵にあずかっていましたが、それでも目立たない程度に、悪いことをコソコソ行うような態度で生活していました。
しかし、デンゲルの宰相はその微妙な関係、あるいはラインをあっさりと乗り越えていきました。
デンゲル側の要求はどんどん過激になり、スキャンダルを人質にされたひだまりの上級国民たちはもはや麻痺したかのようにそれに従いました。
それはまるで薬によって意思を無くした廃人のようであり、まさにデンゲルの狂信者たちの道具に成り下がっていました。
しかも始末に負えないのは、そうした者たちがひだまりの国で大臣、教授、コメンテーター、判事、弁護士、先生としての肩書を持ち、人によっては莫大な収入を得ていたという事実です。
こうした流れを見ながら、テレスたちはひだまりの国に来て、まだ狂わされていない勢力に力を貸すことになりました。
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