ひだまりのスパイの進捗状況その3

ひだまり側のスパイはさらに情報を伝えます。

「ガチス側にはごく一部ですがひだまりに寝返る態度を見せる工作員も見受けられます」


これはレアなケースではありましたが、決してゼロというわけではありませんでした。

これも歴史が示すところですが、戦争中、国家単位で見ると必ず裏切り者というのは存在します。


ガチスはそのあたりの監視が特に厳しいのですが、それでも裏切り者を一人も出さないというのは非現実的な事でした。


翻ってひだまりの国を見ると、年寄りの上級国民の中で、結構な数の人物が半ば公然と、あるいは密かにガチスやデンゲルに心を寄せている事実を考えるとここに集まる官僚たちは複雑な心境になります。


それはともかく、そのガチスから見て裏切り者、ひだまりの民から見れば協力者であるその存在は、ひだまりの国にいるガチス協力者についての情報を惜しげもなく提供しました。


真面目君が多いひだまり官僚たちの中には、その醜さを声や態度で表す者もいましたが、スパイは意に介さず報告を続けます。

その報告が終わった時、会議室の中の反応は様々でした。


思った通りのメンツだとどや顔で聞いていた官僚。

自分の省庁のしかも身近な所にいる、いわば知り合い、上司、同僚などがいて驚きと複雑な緊張感が漂う者たち。


この人は違うだろうと強く信じていた人物の名前が出て、ショックを隠せない者たち、それぞれの反応がありました。

この時、コウメイとテレスがそれぞれ同じ方向性を持った意見を発言しました。


まずコウメイ曰く「確かに貴重な意見だし、皆さんの成果は全体としてとてもすばらしいが・・・この情報をすべて鵜呑みにするのはいささか危険がある気がします、情報の精査が必要ではないか」


デンゲル人であるテレスはさらに突っ込んだ発言をします。

「この協力をしているスパイの中にも不完全な、あるいは偏った情報を流す者、さらに言えば二重スパイとしてわざと間違った情報を流す者もいる可能性は高い、罠に引っかからないように十分気を付けるべきだ」


会議室の中はいろんな意見や感想による空気のよどみが発生していました。

次はその後の討論について触れたいと思います。

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