猟犬を生かしてうさぎも残る その3
SNS情報戦においてはじめてガチスの勢力圏で行動をしたテレスを主力とする仲間たちはひだまりで起きた事故についてコメントを広めていきました。
まず注意したのが、ひだまりではガチスの仕業であることを暗に書いてもお咎めはありませんでしたが、ガチスで直接書くのはご法度でした。
なのでここではあくまで偶発的な事故として表現しました。
その上で、「狡兎死して走狗烹らる」のフレーズを繰り返し流しました。
この言葉はひだまりの国よりもむしろガチスやデンゲルの方が心当たりと伝聞で身近に感じる表現だったので結構効いていたのではと思われます。
しかし、表向きは特に大きな変化はありませんでした。
やがて、「狡兎死して走狗烹らる」のフレーズが周知されてくると、ガチスの情報部はこの動きに警戒を持ち、工作員に注意喚起の指示を送ると同時にSNSの運営に抗議を行うことで動きを封じる方法を取りました。
こうして、とりあえず初めての接触は終わりました。
その後、テレスと男性陣との間でこの作戦の経緯と反省会が行われましたが、なんというか、よく分からないというのが本当の所でした。
その一方、ひだまりのSNSでは女性陣たちによる猟犬救出作戦が着々と進められ、成果が出てきました。
実際に行ってみると簡単なことで、障碍者インフルエンサーおよびその取り巻きたちと普通の陽だまりの民との間にはもともと隙間があり、上級国民やメディア、政治家たちが例の事故によって腰が引けてきたことでその隙間がエビと衣のように乖離を始めたのです。
戦には信仰の要素があります。
連戦連勝の状態が続くと、次がどのような形であれ、勝つという信念が生まれ、それが信仰にまで昇華します。
その必勝パターンが崩れると、得も言われぬ不安が掻き立てられます。
負けるということをあらかじめ想定していれば立て直しも可能でしたが、彼らは必勝のみ、己の陣営に都合のいい結果だけを今まで聞かされていたために混乱するばかりでした。
それはかつて、障碍者クラスタで起きた頭と末端の乖離による瓦解と同じものだと六人組たちも意識していました。
こうして、六人組にとっての成功例の積み重ねが新たな作戦と組織の再編を促すことになりました。
次にその流れを紹介したいと思います。
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