対話と情報

デンゲル人テレスから見ると、6人組をはじめひだまりの民がデンゲル人を信用せず嫌うプロセスはよく理解していました。


彼自身もデンゲル人の悪辣さや嘘の多さ、その尊大さや自己に対する過大評価にはうんざりしていたし、変えたいという気持ちも強かったのです。


また、彼は6人組には話しませんでしたが、このままいけばデンゲルは外にあってはひだまりの国と民を敵に回し、内にあっては内部分裂を起こして国に重大な災いが起きる、そこまで考えていました。


なので、まず穏健派のデンゲル人にとって比較的安全なひだまりの国で力を蓄えつつ、ひだまりの民との友好関係を築いて敵を減らし、デンゲル本国を立て直すという計画を立てていました。


とはいえ、彼の視点で見ればひだまりの民も褒められたものではありませんでした。

デンゲルでは力あるものが正義であり、嘘や詐術にしても騙される方が悪く、だます方は力量があるという考え方でした。


その考え自体はテレスの好みではありませんでしたが、それに簡単に引っかかるひだまりの民のうかつさも彼から見れば弱点、あるいは欠点として見ていました。


いずれにせよ、ひだまりの旧体制とデンゲル人の連合勢力の悪行と対抗するのは彼の今行うべき優先事項であり、そのためには味方は多く、頼りになるに越したことはありません。


そこで彼は政治、経済、メディアなどのデンゲル人に関する情報とその手口、そして狙いと対策をヒキコモリーヌ達に伝えていきました。


これが出来たのは、以前も話した通り彼の父が非主流派とはいえ、一定の力を持った政治家であり、テレスもまた、その優れた思考と多くの仲間を持つ優れたリーダーゆえのことでした。


やがて少しの後、ヒキコモリーヌを通してだけでなくテレスとも対話をする機会が増えた6人組はデンゲルの思考パターンという物を知り、理解するようになりました。


これはとても幸運なことでしたが、6人組は地頭がいいうえに若くて柔軟な考えが出来るできる子でした。


なので、デンゲルの狡猾で巧緻な思考をズルいといった道徳的潔癖さで拒絶することなく受け入れることが出来ました。


これでSNSでのやり取りを含む多くの分野で危険性が減少することになりました。

そして、デンゲル人のひだまりでの活動や拠点を知ることで、今まで漠然として分からないという不安がかなり解消されました。


例えるなら、ジャングルの中で罠が張り巡らされていたのが、草木を取り除いた状態で罠の見分け方を知ったようなものでした。


こうして6人組は警戒をしながらも対話と情報を提供してもらったことでヒキコモリーヌやテレスとの連携をしていくことになりました。

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