第224話 ロシア革命といろはの「ひ」
今まで、渋沢栄一や島津日新斎の考えや行動から生活保護についていろいろと考えてきました。
その中で、生活保護の制度の必要性と危険性についても考えてきました。
まとめとして20世紀に起こったロシア革命を検証することでしめたいと思います。
ロシア革命が始まる前、ロシアは世界最強の陸軍をもつヨーロッパの大国でした。
その一方で貴族という「上級国民」と大多数の農奴という極めて貧富の差、教育の差が激しいいびつな社会でした。
そのロシアが日露戦争で負け、第一次世界大戦で莫大な軍事費の負担を背負わされた時、滅亡のシナリオが怒涛の如く押し寄せてきました。
農奴たちが貧しくなった時、はじめ貴族を中心とするロシア政府はことなかれ主義と力で抑え込めるとタカをくくっていました。
しかし、農奴達の生活は困窮を極め、いままで従順だった農奴達は声を上げることになります。
その中で、無政府主義者や社会主義者たちが現れて、彼らに政府打倒という考え方を吹き込んでいきます。
実は初期のころはこの思想家たちは戦争反対と平和主義を看板に掲げており、貴族たちも農奴達も危険な存在とは認識しませんでした。
しかし、戦争が泥沼化して農奴達の負担が限界に達しようとしたとき、思想家たちは政府に対する怒りをたきつけていきます。
そして、農奴達だけではなく労働者たちを巻き込んで政府に対する不満のデモが頻発するようになりました。
そして、その要求もより具体的になります。
初めは戦争反対、次はパンの要求、そして政治に参加する権利の要求とエスカレートしました。
このころになるとさすがに抑えきれないと判断したようで政府としても大規模な食糧援助や賦役の軽減、選挙権に対する譲歩を表明します。
しかし、時が遅かったのでしょうか、思想家たちにたきつけられた民衆は要求よりも血の制裁を声高に叫ぶ組織に変質していました。
こうして、皇帝家族が皆殺しにされ、貴族制度は崩壊し、国の治安は乱れ、国内の政治は内ゲバによる粛清の末、スターリンの独裁による共産政治と第二次世界大戦の参戦につながり、数千万の死者を伴う地獄の時代を招きました。(第二次大戦の日本の戦死者は約300万人)
この出来事から、いくつか学べることがあります。
まず、貧富の差を放置しておくと結局は上級国民も一般国民も生命的、経済的に地獄を見るということです。
上級国民が対話と譲歩をしても抑えきれないまでの強い負の感情を一般国民に持たせてはいけません。
そうなる前に、不満を持ちやすい貧困層に対して行政が援助したり、話を聞いてケアをするというのはとても大事なことなのが分かります。
次に治安を破壊する無政府主義者たちの暗躍を許すことも見逃すこともしないことです。
こうした声があるレベルまで達すると、まるで山火事のように止めるのは極めて困難な状況になります。
ちなみに彼らの用いた手段は孫子の兵法の理に適っています。
例えば、まずは国家に対して敵意を持たせることで自分たちの手駒として誘導し、それに応じない場合は内ゲバを起して組織を弱体化させます。
彼らが民衆の心をつかむ能力を侮ってはいけません。
大事なのは憎しみの心で民衆を煽る危険な存在に最大限の注意を払うことです。
それと、最後に大事なことを一つ、いわゆる「上級国民」であれ「共産主義者」であれ「農奴」や「労働者」や「一般国民」であれ、多くは無害な、あるいは有益な人々です。
ただ、一部の人々が争いと憎しみを扇動して平和な秩序を乱す行動を促すことも歴史は何度も教えてくれています。
分裂や漠然とした不安をあおる存在には気を付けたいものですね。
福祉や生活保護について考えるとき、目先の軽蔑や差別、憎しみがもし心の中で生まれたならいろは歌の「ひ」にある慈悲の心を、そして渋沢栄一の業績を思いだして、そしてロシア革命をはじめ格差を放置した時の失敗の悲惨さを思い返していただければと思います。
福祉と生活保護に関して長文におつきあいいただきありがとうございました。
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