第19話 障碍を持つ薄幸少女

コモロウは楽しい創作活動に勤しんでいました。

この機会に「彼女」について触れたいと思います。

彼女の外見は小柄でショートカットの髪形とめがねをつけたふっくらした女性でした。


コモロウは渋谷区で生まれました。

5歳のころ交差点で自転車に乗っていたら車とぶつかり事故となりました。

彼女はそのことを隠しましたが、小学校に入るとその事実が彼女の人生に初めて干渉してきました。


身体測定の時に片耳が聞こえないことが分かったのです。

すぐに病院に行きましたが医者はこう言って治療をしませんでした。

右耳が聞こえず三半規管の神経も切れているね。残された左耳を大切にしなさい。

彼女は補聴器は?と尋ねましたが必要ないとの答えでした。

その日以降彼女は時よりめまいにも苦しめられることになりました。


やがて高校2年となり、体力はないものの偏差値としては中の上レベルの公立校に通う彼女に第2の不幸が訪れます。


彼女の家は中堅の建設会社でしたが、父親が酒に溺れ会社が倒産してしまいました。

なんとか、2億もの借金は親戚の援助で助かったものの、進学率98%の学校で進路が変えられたのは彼女の自尊心を傷つけました。


彼女は一時朝の8時から夜の10時まで工場などで働き、休みも月に数えるほどしかない生活をしていました。


こうして月日がながれ、彼女は長い目で見ればお金のあまりかからないネットを趣味とすることになりました。有料ゲームも買い物もしない彼女にとって、ネットでネガティブな話題を話すのは、ある種ストレス解消でした。


ただ、そうした性格のせいかネットの友達は出来にくく、すぐに離れてしまいました。

彼女は自分を女性として表現したがらなかったため、また容姿に自信がなかったために男性からの人気もありませんでした。


お互いにとって苦にならない存在だったのは、祭り之介とフウイだけでした。

祭り之介は竹を割ったような性格のため、コモロウの毒舌を気にしませんでした。

またフウイもまた穏やかでとげのある言葉にもスルーをして涼し気な会話をしていたので衝突はなく、特にコモロウにとって居心地が良かったのでした。


男2人はというと歴史についてあれこれ話したり、祭り之介は地元愛を、フウイは歴史うんちくを語ります。


こうした長くも不毛ともコモロウに思える言葉の洪水の中に女性に対するある種の配慮は皆無でそのことも彼女にとって気分の良いものでした。

そうした歴史の事実や憧れや知識の発見によって、毒舌を交えつつも吸収していったコモロウは穏やかになっていきました。


そして、彼らの夢と野心と妄想に当てられた彼女は人生で初めて自分の夢を持ちそれを形にするべく小説の内容を一所懸命かんがえていました。

それはBLやドロドロした人のやり取りなど彼女の好物のフルコースではありましたが、それでも彼女は幸せな気分で楽しんでいました。






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