第62話
「レナード様、どういうことですか!」
「いや、どうもこうも、ドルイガを撃退したから……」
「撃退しただけではまた襲ってくるでしょう!
次にはミースロッド公爵家の精鋭を引き連れてやってきます!
ハント男爵家がドルイガを罠にはめたと憎しみに燃えているでしょう。
何故殺さなかったのです!
何故殺せない程度の実力で戻ってきたのです!
一年間もの時間を稼いだとお伝えしたいたはずです!
中途半端な訓練で戻ってきて、御姉様を殺す御心算ですか!」
デリラが激怒してレナードを罵っています。
父上も母上も止められないというの事、デリラと同じ意見なのでしょう。
私も、正直同じ思いです。
時間稼ぎしていたのは、ほとんどハント男爵家のため、自分のためですが、レナードに対す想いが全くなかったわけではありませんし、期待もしていました。
私は騎士でも兵士でもありませんから、命を懸けたギリギリの戦いがどれほど厳しいのか分かりません。
ですが、奇襲に成功したレナードが圧倒的に有利だったように見えました。
ドルイガが切り札を使ったのも、そのあとの魔法反応で分かりました。
切り札勝負でレナードが勝ったことも、レナードがドルイガの腹を裂いたことで分かりました。
あそこまで追い詰めておいて、ドルイガに逃げられた理由が分かりません。
確実に止めをさせたと思います。
「レナード、どうして止めを刺さなかったの?
あそこまで追い詰めたら、レナードなら勝てたと思うのだけれど?」
「護衛がいたんだ、それもかなり強力な奴が二人もいたんだ。
ドルイガには劣るが、二人に連携を取られると斃すのに時間がかかる相手だった。
そいつらに気を取られた隙に、ドルイガの奴が全力で逃げやがった。
だが重傷なのは間違いない。
腹から腸がはみ出ていたから、二三カ月は戦線に出てこれないはずだ」
「だったら何故追撃しなかったの!
皇都であろうとミースロッド公爵領であろうと、追って確実に仕留めなさいよ」
デリラが横から口をはさんできました。
怒りで我慢できなかったのでしょう。
「いや、ヴィヴィが心配だったから……」
「心配?
心配ではなくて執着でしょう!
さっきも言ったけれど、一年訓練していたら確実にドルイガを討ち取れていたわ!
王太子殿下や親衛隊と連携していても、確実にドルイガを討ち取れていたわ!
レナードが御姉様を信じなかったから、御姉様に執着したから、ドルイガを逃がしてしまったのよ!
獣人同士の番いではないのよ!
愛情が高じて殺意や食欲に変化する可能性もあるのよ!
御姉様がドルイガに殺され喰われるようなことがあれば、どんな卑怯な手を使ってでもレナードを殺す!」
ああ、デリラが切れてしまいました。
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