第54話
ドルイガは私を確保しようと跳んできましたが、自動的に転移魔法と反撃魔法が発動し、私は無事に家族元に戻り、ドルイガは反撃魔法で跳ね飛ばされました。
普通の人間なら、いえ、人赤鹿種のクリスチャンでも大怪我を負うくらいの反撃魔法なのですが、打身と軽い眩暈程度のダメージしか与えられていません。
「父上はどう思われましたか?」
「確定はできないが、ヴィヴィが主導権を握っているのではないか」
「母上はどうおもわれましたか?」
「私もヴィヴィが主導権を握っていると感じました。
でもまだ確実ではありません。
それに、条件によってはヴィヴィの主導権を覆すようです。
会う時には最新の注意が必要だとおもいます」
「私もそう思います。
これからも細心の注意を払います。
デリラはどう思いますか?」
「……これを口にするのは嫌なのですが、正直に申します。
確実な情報を得るには、御姉様とドルイガが肉体関係を持った状態と今の違いを検証する必要があります。
加えれば、妊娠中と子供が生まれてからの違いも検証する必要があります。
その上でないと断言できませんが、獣人同士の番いと獣人と人間の番いでは、呪いの発生が違う可能性があります」
デリラの言う通りでしょう。
今の状態と、これからの状態では、全く条件が違うのでしょう。
クリスチャンとブリーレは獣人同士で、肉体関係はありましたが妊娠はしていなかったと、後の検証で明らかです。
その状況であれほどの影響力を、ブリーレはクリスチャンに与えていました。
さっき私がドルイガと相対して感じたのは、ある程度の優位はありましたが、完全な主導権は握れていないという事です。
ですが、私がドルイガの影響力を受けた感じは全くありませんでした。
自覚だけでなく、父上や母上やデリラから見ても、私がドルイガに操られる心配はなかったようです。
「ヴィヴィ。
ドルイガに皇国に戻って皇帝と交渉するように命じてくれるか。
このままではここから逃げ出さないといけなくなる」
父上の申される通りです。
ドルイガは私が眼の前で転移してしまったので、狂気にかられたようです。
配下の者達を呼び寄せる事なく、一人必死で落盤を掘り返したいます。
残り二つしかない落盤防御の一つを突破させる訳にはいきません。
それに、安全圏にいるうちに、どれくらいの命令なら聞くのか確かめたいです。
「ドルイガ殿。
掘るのを止めてください!」
私が強く鋭く命じると、ドルイガの動きがピタリと止まりました!
「まずは約束を守って下さい!
皇帝陛下と交渉して下さい!
今直ぐ皇国に戻り、皇帝陛下と交渉しなさい!」
ドルイガは動きを止めましたが、洞窟から出ようとはしません。
ですが魔道具に映し出されるドルイガの顔は、私の命令と自分の願いの間で苦しんでいるような苦悶の表情です。
ここはもう一歩踏み込んでみましょう!
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