第2章
第18話デリラ視点
「御姉様、入って宜しいですか?」
「ええ、いいわよ。
どうかしたの?」
御姉様がいつもの涼やかな声で返事してくださいます。
最近とみに魅力的になられた御姉様に話しかけるのは、少々緊張してしまいます。
余りに魅力的になられたので、妊娠でもされたのかと疑念を抱きましたが、そう言う事でもないようでございます。
別に御姉様の妊娠が嫌と言う訳ではありません。
ゴードン男爵家としては跡継ぎは必要ですから、結婚等する気のない私としては、御姉様が子宝に恵まれるのは望む所なのです。
「失礼いたします。
いえ、別にどうと言う事はないのですが、御姉様とお話がしたくて」
「まあ!
そう言ってくれるとうれしいわね。
ではお茶でも入れましょう」
情けない事ですが、少しオドオドとしてしまいました。
以前はこんな事なかったのですが、どうした事なのでしょう?
人妻になられた御姉様の魅力に圧倒されてしまっているのでしょうか?
レナードと夫婦の契りを結んだとは言え、僅か一日ですから、そんな事はないですね。
その結婚も、万が一レナードが死んでしまった時に、世襲辺境伯の位を継ぐ者を明確にするための政治的な結婚です。
とは言っても、父も母も私達子供の事は目に入れてもいたくないほど可愛がってくれていますから、御姉様に無理強いしたわけではありません。
そんな事をしたら、例え父と母であろうと、私が許しません!
理由は、ブリーレ反乱事件直後に、御姉様と私にはこれまで以上の縁談が舞い込んだ事でした。
ゴードン男爵家は、王太子殿下と強い繋がりがあると思われた事が原因です。
反乱事件に関係しなかった獣人系貴族家は、保身の為に人系有力貴族と縁を結ぼうと躍起になっていました。
その為に選ばれたのがゴードン男爵家だったのです。
父も母も、どれほど利があろうと、そんな縁談を私達に押し付けたりはしません。
でも跡継ぎが必要だとは思っておられていました。
私が絶対に結婚しないと言う事も理解してくださっています。
御姉様に下手な婿を選んだら、私が殺してしまうのも理解してくださっています。
そんな状態で御姉様の結婚相手を探すとなると、レナード以外適任者がいなかったのでしょう。
「美味しいクッキーもあるのよ。
ああ、心配いらないわ。
ちゃんと毒見はすませているのよ。
でもデリラの前でも毒見するからね」
本当に御優しい御姉様!
私が神経質なのを理解してくださっています。
でも御姉様が用意してくださったクッキーなら、例え猛毒が仕込まれていても食べてみせます。
私の御姉様への愛情は、死などで揺るぐようなものではありません。
御姉様が私の死を望まれるのなら、笑って死んで見せます。
「ヴィヴィ!
デリラ!
どこにいる?!
一大事が起きた!
直ぐに沈黙の間に来なさい!」
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