ユリウス・スラ・ゴドリノ、立派な名前

〈幼女〉朝顔は〈紫スライム〉サツマイモを揺さぶった。


しかし、もちろんサツマイモはピクリとも動かない......。サツマイモは濃い紫色をしていたが、だんだんとその色が薄くなってきていた。


と、その時、天から光が差し込んできた。


その時その場にいた者のうち、無数の時間軸の姿がそこにあらわになったのを見たのはカモノハシだけであった。


カモノハシは、水底に溜まる澱のようなものが妖しく蠢いているのを見た。


以前にも書いたように、カモノハシはある意味最強の生命型兵器である。といっても上級カモノハシと、今ここにいる野良のカモノハシでは能力にかなりの差がある。


ある意味最強というのは、カモノハシ族は ' 時 ' を見ることができるからである。' 時 ' を見る力は有事においては大きな意味を持つ。戦争を有利に進めたい者は、こぞって上級カモノハシのその力を手に入れたいと考えた。


ここにいるカモノハシも一応、' 時 ' を見る力を有するが、野良カモノハシであるためその力は弱い。


彼は、こんなにも無限大とも思われる時間軸を初めて見た。時間軸が妖しく蠢くのも初めて見た。


野良カモノハシはその恐ろしさに慄き、おしっこを漏らしてしまった。恐怖のため彼は自分の股間がおしっこで温かくなったことに気付くことすらできなかった。


しかし、どんなに恐怖しても彼らカモノハシは ' 時 ' について自らの感想を言うことはできない。そのように制御されているからである。


妖しく蠢く時間軸......。サツマイモこと "ユリウス・スラ・ゴドリノ" が生きてきたこれまでの時間。そして、これからの時間。


カモノハシはその恐怖に絶叫してしまいそうになるのをなんとか堪えた。


その時間軸に天からの光が差し込む。カモノハシは持っていたオレンジ色に光る石を落としてしまった。


天からの光は、〈紫スライム〉サツマイモ優しく包みこんだ。

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