第23話 幕間:世界が終わった日の続き

 尾張さんの葬式には出席しなかった。


 尾張さんの訃報が告げられた日。どうやって家に帰ったか、それすら覚えていなかった。


 ただ家についた時、僕は全身ずぶ濡れで、いつのまに怪我をしたのか、手のひらには擦過傷が出来ていた。

 どうやら、何度か転んだらしい。


 そんな状態で玄関に座り込んでいたところを、母親に見つかった所で意識を失った。

 いつのまにか寝かされていた部屋のベッドで熱を測ると、三十八度の高熱だった。

 

 このまま、死んだら尾張さんの後追いみたいだなぁ。


 熱にうかされながら、そんな事を考えていた。別にそれでもいいと思えた。


 幸か不幸か、単なる風邪だったようで、市販薬を飲んだだけで三日で熱は引いた。

 しかし、体調が戻っても家から出る気にはなれなかった。


 尾張さんの世界は彼女が言った通りに終わりを迎えた。


 それが、望み通りの終わりだったとはとても言えないし、彼女が本当に終わりを望んでいたとも思えなかったけれど。


 そして、僕の世界も同時に終わりを迎えた。


 いや、終わらなかった。

 何故かまだ、続いていた。

 

 それを認めたくなかった。  


 家から出れば、終わらない日々が始まる。彼女はもういないのに。


 そんな事実を認めるわけにはいかなかった。現実がそれを提示してきても、感情がそれを拒否していた。

 だから、彼女の葬式には行かなかった。

 彼女との最後のお別れだとか、よく出来た娘でしたとか、そんなテンプレな決まり文句で、彼女の人生を締めくくって欲しくはなかった。


 ダラダラとベッドに引きこもって、一週間後。


 普通に母親に家から叩き出された。

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