第102話 御魂と中年


「……り、龍……」

 

 玉龍の身体が巨大な龍に変わっていくが、

「兄ちゃんっ! 龍の身体が!」

 龍が崩れていく!?


『ほぅ……まだですか』

 声の方を向く。

『こちらより龍をどうにかした方がよろしいのでは?』

 誰か知らんが、その通りだ。

 こいつもどうせデモンだろ。

 それより玉龍を助けるのが先だ。

 俺の身体も少しづつ力が戻ってる感覚はある。


『カズト! どうすんだ?』

 玉龍は苦しそうな声を上げる。

 崩れる身体を抑え動かない。

「俺に回復を! 急げ!」

 美羽が回復するが効果が無い。


「ダメだな。賢人! 美羽を頼む!」

「うい! 行くよ!」

「キャッ!」

 肩に担がれた美羽が暴れる。

「美羽、頼む! 玉龍に回復を!」

「分かったわよ! 行け! 賢人!」

「うっせ! 行くよ!」

 賢人がスピードを出し、龍の身体を駆け上がって行く。


『俺らはあっちか』

 ナキが前に出る。

「ボブとフウは美羽達をサポートしてくれ。ナキは俺と、あの鳥人間だ」

 さっきの声の主は、鳥のような面をつけている。こいつが何か知ってるはず。

『このマスクは、悪性のものを吸い込まないようにす……いや、畜生に言う事でもないですね』

 口調がおかしい。……それに、畜生? 人間が、ってことか?

 手を握り、足に力を込める。

「さて、少しは戻って来たな」

 飛び出すと同時に、ナキが逆に回り込む。


「おっらぁ!!」

『うらぁ!!』

 拳を振るうと、その場から男が消えた。

「そこだ!」

 寸前で消えると今度は出てこない。


『あいつは?』

「分からん」

 身体中に血が巡り、熱くなってくる。

 玉龍の血か……。

 

『これ返すわ。俺はこれが一番だ』

「な! これGのやつ!」

 ナックルを投げてきて、ナキは金棒を肩に担いぐ。

 Gのだぞ? こんなの俺が使うと思ってんのか?


『それな、たぶんお前しかつかえないぞ?』

「は?」

 ナキが使えなかったのか? ただ嫌なだけじゃないよな? せっかくやったのに。


 ピリッと肌がざわつく。どこに出てくるのが感覚で分かる。


「よっ! 捕まえた」

『グッ!!』

 鳥人間の首を持ち上げる。

「玉龍になにをした?」


『な、なにも……やったのはお前らだ」

「は? ならお前はなんでここにいる? ダンジョンか?」

 俺達人間ってことか?

『お前らが……あの龍を殺す……私は、、素材の回収』

 あぁ……“あれ”のせいか……最悪だ。

 玉龍は汚染されてる。

「それで? 何の為に使うつもりだ? 鬼子か?」

『く、それは、……グガッっ!!』

 ……なんでこいつらは。


『死んだのか?』

「あぁ、玉龍を助けるぞ」

 鳥人間は力無く地面に崩れ落ちる。なぜ簡単に死ねるんだ。

 それよりも玉龍だ。このまま死なせるわけにはいかない!


「美羽! どうだ?」

 玉龍は落ち着いているが、

「だめ……少し遅らせてるだけよ」


『コレガ寿命トイウモノデスカ……』

 大きな玉龍の身体は石のようになり、亀裂が入っている。……上半身はまだ大丈夫だが。

『小龍』

『ここに……玉龍……もういいのですか?』

 真っ白なコアが玉龍の目の前に浮かび上がる。

『ハイ……マダ少シ時間ガアリマス。小龍ハ、ミンナニ、『デモン』ノ説明ヲオ願イシマスネ』

 小龍と言うコアは点滅し、

『デモン。

 ディメンション・モンスター。

 この世界と並行にある世界、そこにデモンは存在します。

 

 その世界は人間が作り上げた世界。

 流罪、島流しの罪人を送る牢獄。

 「終の島」

 デモン達は、その島からは出られない……はずでした』


 あいつらは罪人で考えているのは、

「復讐の為か?」


『それは分かりません。玉龍とこのダンジョンに執着するのは、爆発のせいでダンジョンの次元が歪んでいるからだと思われます』


「ありがとう。ここからは調べる。それより玉龍。回復ができないなら、なにか方法はないか? 必要なものがあるならすぐ取ってくる!」

『玉龍……御魂移しを』

「小龍! 何かあるのか?」

 玉龍が助かるならなんでもいい!

『御魂移し、現在の肉体を捨て、新しい肉体に……ですが、龍の魂を受け入れる器を作るとなると、どうすれば』

 龍の魂……でも、コアの力があれば。


「ポイントはどれくらいある? それと今の龍の肉体も使えば」

『現在のポイントと……龍の肉体を使えば……はい。なんとか器として使えるかと』

「よし! もし何か必要なら言ってくれ!」


『私ハ疲レタ……モウ、眠ラセテクレ』

 玉龍には悪いが、

「俺はもう、お前の仲間だから無理言うな。誰がなんと言っても、お前を助けたい」


『それでは、ポイントを使い肉体を用意しましょう』

『……小龍』

 コアも玉龍に生きてて欲しいんだな。


『それはいいです! では残りの肉体はいただきますよ?』

 その声はさっき死んだ男のものだった。

『……何故生きている?』

 さっき死んだはずだ。


『誰が死んだんです?』

『お可哀想に』

『イッヒヒヒ……』


 数十人はいるか……まだ出てくるな。


「小龍は玉龍の身体を! お前ら気を付けろよ!」


「「「「『うぃ!!」」」」』


「え……はい!」

 フウもそのうち慣れるか。

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