第77話 自由と中年


「よ! また来てガフッ!!」


『おっそーい! 来るって言ったわよね! もっと早く来なさいよ!』


 ……こいつ。

「いつ来るかなんて、俺の勝手だろ! もう帰るわ!」

 ったく、心配して来てみればこれだ。


『え? う、うそよ! ごめんね? ねぇ、待ってってばぁ!』


「わーかった! 服を引っ張るな! 伸びるだろ」

 はぁ、こいつだけほっとくのも、気が引けたから、今日は愛媛ダンジョンに来たわけだが。


『ふぅ、ビックリさせないでよ。で? 今日は持って来たの?』

 妖精は、頭に乗ってくるが、


「おい、頭に乗るなよ。……あと、持ってくるのが当たり前みたいに言うな。善意で持ってきてやったのに、やりたくなくなる」

 頭を傾けて、落ちてきた妖精を掌に乗せる。


『えー、だって前来た時に、持って来るって言ったじゃない!』


「言ってない。お前が来いって言ってただけだろ? まぁ、持って来たけどな」


 妖精を置いて、テーブルと椅子を出して、ずんだ餅を置く。


『そ、そうだった? まぁ、いいじゃない。……って、あんた、そんな喋り方だった?』

 と机の上に座る妖精。


「ん? あぁ、なんか疲れてるのかな? これが普通だから、慣れてくれ」

 と椅子に座る。


 最近、他人と喋るのって、疲れるんだよな。仲間とか、こいつなら別に気にならないんだが。


『へぇ、あんたも苦労してんのね。ていうか、いっただっきまーす!』

 ずんだ餅にかぶりつく妖精ってのも、おかしなもんだな。


「あぁ、俺はカズトだ。お前は?」

 これも聞く予定だったな。


『もぐ……んくっ。お互い、名前も言ってなかったわね。私は桃花よ! よろしくカズト!』

 掌サイズのトウカは、片手をあげる。


「あぁ、よろしくトウカ」

 俺はコーヒーを出して、トウカが食べ終わるのを見てると、


『ん? カズトも食べたいの?』


「そんなわけないだろ。食いたかったら、新しいのをだすよ。まぁ、ゆっくり食べろ」


 トウカは笑うと、また食べだす。


 しかし、ずんだ餅は、五個入りのもので、結構でかいのだが。

 もう、四個目だな。



『ごちそーさま! 美味しかったわ! ありがとうね』

 本当、どこに入ってんだか。


「あぁ、どういたしまして。さて、話をしに来たんだが、トウカはダンジョンから出たいか?」

 

 俺は、ここ以外のダンジョン、守護者、そしてコアのことを話して、異次元ハウスに来るかを聞いてみると。


『行くに決まってるでしょ! なんでこの前来た時に、誘ってくれなかったのよ? ここに一人って寂しいのよ?』


「近いよ。まぁ、トウカを見て、安心したのもあるかな。無害だなって」

『くぅー! 何よ! 無害って! 裏の私を知らないだけよ! 私を怒らせると、凄いんだから!』


 暴れるトウカ。

 そういうところが無害なんだよな。


「悪かったよ。ほら、これでも食べて落ち着けよ」


『あ、チョコレートだ!』

 ……チョロいな。脳みそも小さいのか?


 まぁ、喜んで食ってるし、

「トウカ、コアはどこにある?」


『んー? あっひ』

 口に物入れて喋るなよ。


 緑に光るコア、手を触れると、

『あ、聞いてたから、魔力下さいなぁー』

 ……守護者に似るのか?




「……ふぅ、お前は貰いすぎだろ」

 このコア、普通より魔力吸いやがって、


『そんなことないですよぉ? この身体にするのに必要だったんですぅ』

 

 身長は美羽と同じくらいだから、160くらいか。緑の、緩いパーマのかかったようなロングヘアー。タレ目に巨乳。服はおとなしめの格好だな。


 グラビアアイドルみたいだな。

 賢人達が喜びそうだ。


「まぁいい。名前は」

『ーーリン!』

 トウカ……神聖な名付けを。


「そんな適当な、名前で言い訳ないだろ。ズンダ。なんてどうだ?」

 緑から連想されるずんだ餅。……うん。良い名だ。


『どーせ、髪の色からでしょ? ならリンだってグリーンだし、オッパイもプリンみたいだからいいでしょ? ズンダは、ちょっとないかな』


 くそっ! 二個もかけてるのか……

「いや、俺はいつも和菓子からだな」

『でしたらぁ、お抹茶のグリーンティーのリンでよろしいじゃぁないですかぁ?』

 コアが提案する。


 ……。


「俺もそう考えてた。……よし、お前の名はリンだ」


『まぁズンダでなければ、いいんじゃない?』

 トウカがリンの肩に乗ると、


『よろしくお願いしますぅ。トウカちゃん』

 


 ハウスに戻ると、食い付くのは二人だな。


「おぉ! やったな、ボブ! フゥウゥゥ!」


「お、おう」


 賢人はいつも通りだが、ボブ?


「おい、まじトーンはやめれ」


「すまん、乗り遅れてしまった……」

 おぉ、真っ赤なボブだ。

 乗り遅れるとキツいよな。


「まぁ、これで今のところ攻略したダンジョン守護者とコアが集まった。と言う事で、一旦お休みとします!」


「「「「「うーーい」」」」」

 みんな賛成みたいだな。

 だいぶ動いたし、ここらで自由時間は必要だろ。


 俺も久しぶりにゆっくりしよう。


「んじゃ、またなぁー!」





「って解散したよな? なんで毎日、俺のとこに集まってんだ?」

 ……こいつら。


「俺は兄ちゃんの弟だしな!」


「俺は賢人について来てるんすよ?」


「え? カズトさんとこにとりあえず集合じゃないの?」


「僕は寂しいでーす!」


『は? まぁ、なんとなく?』


 ……こ、コイツら。


「まぁ、いいか。なんか面白いこと探しに外に見るか」


「「「「『賛成ぃーー!」」」」』


 ナキも慣れたな。

 

 さて、動きますか。

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