第124話 オペレーション『鳥籠』(1)
シャルハットには「義務」がある。
魔術団の手となり足となり、それを果たすのだ。
成果や評価、そこに価値はない。「義務」を果たすために行動をするということ自体が意味である。
シャルハットは過去に縛られている。故に果たすべき「義務」を全うする中で、どれだけ自分が楽しめるか、今をどれだけ謳歌できるか、そこに全てがあったのだ。
◆
「さぁて、ぼちぼちゴールですかね?」
シャルハットの前方、約50m先。持参したライトで、照らした先に扉が見える。
エレベーターが行き来していたであろう通路は、とうとう直線になっていた。秘密基地に至るまでのエレベーターは、上下だけでなく左右にも動くらしい。一体どういう仕組みなんだか。
ただ、この先には、間違いなく敵の総本山がある。
――……ゴールというよりか、
次の瞬間、何かが、『
「……」
後ろを振り返ると、誰もいない。
恐らく、例の瞬間移動の能力を持った『魔術内包者』だ。
「ふぅ……」
ここに来るまでずっとだ。何かを投擲しては、消えるの繰り返し。
攻撃してくる割にはやる気が感じられず、反撃するには一瞬すぎて狙うのは簡単ではない。とんでもない糞ゲーの、もぐら叩きをしている気分だ。
「ちょこまか、ちょこまか、何がしたいんだか……」
現在、テレポーターの足止めという仕事はしっかり果たせている。だが、あまりにつまらない。
シャルハットは足を進めた。あちらのやる気がないなら、滅茶苦茶に施設を破壊すれば良いだけのこと。
加えて、こちらには『
シャルハットのプランとしては、最初は『
足止めという「義務」もこなし、人の物を滅茶苦茶に壊せるストレス発散要素もある素晴らしい作戦だ。
「よぉっと」
エレベーター通路の先、頑丈そうな扉を『
やっと楽しめる。
「おじゃまし――」
入ってすぐ、受付のデスクがあった。デスクの上に一人の男が座っている。
銀髪に片眼鏡をかけた男。
こいつはみたことがある。忍者を殺したとき、現場に現れた男。恐らくテレポーターで間違いない。
「ようこそ、『黒葬』へ」
だが、それよりも衝撃的。
目に飛び込んできたものは床にまき散らされていたある物。
ダイナマイトであった。
――ここ、ごと吹っ飛ばすつもりですか?!
バカな。
ここを捨てるなら、なぜテレポーターを呼び寄せた。ブラフか?
ひとまず、ダイナマイトの直接的な威力は問題ない。『
どうする。
「『
シャルハットに与えられた時間は充分でなかった。即決を迫られ、敵の思惑を予測しきる前に判断をせねばならなかった。
この銀髪はすぐに逃げることが出来る。ダイナマイトが本物である可能性は低いがないことはない。『黒葬』の高そうなものを片端からぶち壊して回りたかったが、この際、後回しだ。
奴を閉じ込めてしまえば、ダイナマイトを爆発させることはないだろうし、テレポーターの足止めという仕事も遂行できる。
――そもそも、『
『黒葬』にとって、『
シャルハットと銀髪の男は結界の中に消えて行った。
◆
シャルハットが本社に到達する少し前、
「これでいいデス?」
幽嶋は瞬間移動で取ってきた大量のダイナマイトを抱えていた。
「よし、ばら撒いておけ」
「……指令本部長。本社を爆破するのは、現象課としてかなりの損害が……」
静馬は今までにみたことないほど、青ざめた顔で、獅子沢に意見した。
「バカか。脅しだ。爆発などさせるものか」
「脅し……ですか?」
「佐渡。お前の策を実行に移すには、まず魔術師と麗が『
「えぇ。その通りです」
静馬の
「魔術師はもしかすると、本社にダメージを与えることが目的かもしれない。いや、正しくは、それが目的の一つに入っているかもしれないということだ。であれば、あちらのペースで『
「なるほど……」
無論、不確定要素はあった。
それは、大前提とした『
そもそも透過の魔術で札を先に貼っておくという、後先をあの時の全裸男が考えてなければ破綻する。まあ、今からくる魔術師がその場で貼ることも考えられるが。
獅子沢の推測では成功率70%程度とみた。
だが、幽嶋と魔術師が『
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